2018年9月12日水曜日

生命がマグネシウムを利用するようになったワケ

吉冨 信長
2017年9月12日 ·

生命が活動する上で最も重要なミネラルはマグネシウムであり、そして見方によっては鉄でもあります。原始生命は鉄を利用した代謝がほとんどでしたが、真核生物や多細胞生物が誕生する頃にはマグネシウムをメインの代謝ミネラルに変えていきます。

今日は、なぜ生命はマグネシウムを利用するようになったのかをみていきます。


生命が誕生した約38億年前の海には、鉄(Fe)イオンが豊富でした。生命は鉄の酸化還元電位を利用することにより、あらゆる生理機構を得ることができました。例えば、鉄の酸化還元性を利用したタンパク質である鉄硫黄クラスターは最も起源の古いタンパク質であり、エネルギー発電の場である電子伝達系において今もなお使用されています。

ご存じのように鉄は遊離してしまうと活性酸素を発生しやすいという大きな短所もあるため、私たちの生体内での生理機構において非常に厳戒態勢で扱われます。しかし、生命が誕生した当時の地球の環境は酸素(O2)がほとんでありませんでした。そのため、当時の生命にとって、鉄の危険性はさほどありません。

ところが、地球史上、最大の事件が起きます。それは光合成細菌の一種であるシアノバクテリアが誕生したことで、光合成で生まれた副産物の酸素が海水中に蔓延したことです。当時の生命は嫌気性(=酸素嫌い)だったため、酸素は毒物でしかありません。海中の鉄は現在の数千倍もの濃度があり(今では考えられないが当時の海中ミネラルはFe、Ca、Mg、Na、K、Mn、Znの順で存在していた。そのぐらい鉄に困ることはなかった)、これによって何とか酸素を鉄と反応させ、酸化鉄として解毒していたのです。

しかし、その後シアノバクテリアの異常繁殖に伴い、いよいよ海水中の鉄も尽きてきました。酸化鉄は鉄鉱床として海底に沈殿するからです。鉄が減少したため海中で酸素が増え、いよいよ大気中に猛毒の酸素があふれ出すようになります。

地球における酸素上昇により、好気性(=酸素利用できる)の生命があらわれるようになりました。中でも有名なのは、αプロテオバクテリアという光合成細菌から派生した細菌ですね。これはのちのミトコンドリアです。

そして、嫌気性の古細菌がこの好気性のαプロテオバクテリア(つまりミトコンドリア)を取り込み、酸素利用したエネルギー代謝を獲得します。つまり、真核生物の誕生です。しかし、当時の海水中には利用するのに鉄が少なくなっていたこと、酸素が増えたため鉄利用に危険性が出てきたことなどの理由で、使っていた鉄の一部を他ミネラルに代用する必要性が出てきたのです。

そこで、生命は海水中に豊富に存在していたマグネシウム(Mg2+)イオンを利用するようになります。生命が誕生する前には海水中にはDNAやタンパク質が存在し始めていましたが、実はこれらよりも前にRNAが存在していたとされています。

アトランタのジョージア工科大学の研究者らは、酸素がほとんどなかった初期の地球環境下においては、RNAはもともと鉄の存在下で進化し、鉄によって作動するように最適化されているということを発表しています(2012年)。実際に、その環境下を再現して実験したところ、今ではマグネシウム利用によって作動するRNAに、鉄を利用するとマグネシウムの代わりになったことがわかり、さらにこれらの反応はマグネシウムより鉄の方が優れていたことがわかりました。

これは、以前鉄の利用によって作動していたRNA(や酵素)の多くが地球環境の変化に伴い、マグネシウムに置き換わったことを示唆しています。もちろん、ご存じのように、全てが置き換わったわけではありません。鉄の酸化還元電位を利用した反応はミトコンドリアをはじめ、今でも多くの生理機構の中に残されています。海水中から枯渇した鉄を求めて、生命はこの後、いよいよ食物連鎖の道を歩み、それによって鉄を得る方法を得ました。

生命がマグネシウムを代謝の基本ミネラルにしたのは以上のような理由があるからです。マグネシウム(Mg2+)は、ATPと複合体を形成し、ヌクレオチドや酵素との複合体を形成する、最も重要な代謝ミネラルです。鉄が枯渇したことによって生命が絶滅を回避した唯一の方法が、マグネシウムという代用のミネラルを獲得したことだったのです。

2018年9月11日火曜日

歯ぎしりとパントテン酸(B5)

もし、眠っている間に歯ぎしりが多いと指摘されたら、パントテン酸(ビタミンB5)を試してみるといいかもしれません。

50年以上にわたって栄養療法と自然療法を研究してきた、アメリカのアラバマ大学のCheraskin博士とRingsdorf博士は、歯ぎしりする人にパントテン酸とカルシウムを摂取させると改善するという報告をしています(Dent Surv. 1970 Dec;46(12):38-40)。

歯ぎしりに悩まされる患者らにビタミンA、C、E、ヨウ素を摂取させたグループでは改善が見られなかったが、ビタミンA、C、E、ヨウ素、カルシウム、パントテン酸(ビタミンB5)を摂取したグループは、約1年後には歯ぎしりが 消失したという結果になったと報告しています。彼らはパントテン酸とカルシウムの投与が功を奏したと結論付けています。

パントテン酸は抗ストレスビタミンといわれるように、ストレスに対抗する副腎や脳の重要な栄養素です。ストレスはパントテン酸を消耗させ、パントテン酸の欠乏はストレスをさらに誘発させます。

アメリカのアイオワ州立の刑務所で、パントテン酸除去食を与えられたグループに、尿中の副腎ホルモン値が低下していき、疲労や争いが多くなり、呼吸器感染も増えたことが報告されています(Proceeding of the Society of Biology 86,693-698,1954)。パントテン酸が食事に戻されたときは、これらの症状が全て改善されたそうです。

そもそも、歯ぎしりはさまざまな原因があります。中でも夜間低血糖やストレスなどが大きく関係しています。外因的要因で副腎が弱ると、低血糖やアレルギーが発生します。

一般にこうした治療に使われるパントテン酸の推奨量は250~500mgという大量投与が必要だとされています。ただし、歯ぎしりの追試はあまり多く行われていないのが現状であり、これがどこまで現場で功を奏すのかは不明です。

以上より、歯ぎしりの対策にパントテン酸を意識してみるのもいいかもしれません。

※治療は独断でせずに、必ず医療機関の指導のもと行ってください。

2018年9月7日金曜日

皮膚の刺激と自律神経

吉冨 信長
2017年8月10日 ·

「ふれあい」とは心と心を通わせることを言いますが、もとは「触れ合う」から来ています。お互いの肌を触れ合ったり、タッチしあったりすることが、心の通い合いへ繋がっていくのです。

肌・皮膚の刺激はそのまま脳に直結しています。日本人が少ないとされるスキンシップは、特に現代社会では必要とされる行動です。


皮膚に触れることで、愛情ホルモンまたは絆ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌されます。オキシトシンはそもそも分娩や母乳分泌を導く女性特有のホルモンとして捉えられていましたが、現在では老若男女、誰にでも分泌されるものということがわかっています。

そして、このオキシトシンは自律神経を整う上でとても重要な役割を果たしています。

自律神経には、活動をしているときやストレスを感じているときに働く交感神経と、リラックスしている・体の回復をしているときに働く副交感神経に分かれます。現代人はストレス過多や睡眠不足によって交感神経が過剰になりやすく、自律神経のバランスを崩しやすい傾向にあります。

交感神経優位のときには、体はアドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンの濃度が血液中に高まってきます。これらが一時的であればさほど問題にはならないのですが、長期で過剰に持続してしまうと、キレる、イライラする、落ち着かない、高血糖になるという症状があらわれます。

さらにアドレナリンやコルチゾールは血糖値を上昇させるだけでなく、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きまで悪くします。

実は、皮膚刺激などによりオキシトシンが分泌されれば、アドレナリンやノルアドレナリンそしてコルチゾールの分泌を抑制することがわかっています。つまり、オキシトシンは交感神経の働きを抑え、副交感神経の働きを高めてくるのです。

また、オキシトシンは、ノルアドレナリンの分泌をコントロールするセロトニン(通称・幸せホルモン)の働きを促進します。セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの材料にもなるため、オキシトシンは良い睡眠をとるのにも必要なホルモンといえるでしょう。

最近の研究では、オキシトシンが胃腸の不調を改善することが示されています。オキシトシンがストレスなどによって損傷した胃や腸内の上皮細胞内でプロスタグランジンE2という生理活性物質の放出を増加させ、腸の損傷の修復を促進し、傷害から保護することがわかっています。実際に、米国をはじめ放射線療法によって損傷した腸の治療や過敏性腸疾患(IBD)にオキシトシンを投与して改善しています。

皮膚刺激は私たちの生体に様々な利点を持ちますが、中でもオキシトシンという脳内最強のホルモンを分泌させ、自律神経の正常化をはじめ、多くの効果をもたらすのです。

体はマグネシウムをいつも欲しています

吉冨 信長
2016年8月10日 ·

地球が誕生してから、始めて生命が生まれたのは海の中です。海の中で誕生した生命は、海水に溶け込んでいるマグネシウムを利用することで、体の代謝を維持する仕組みを構築してきました。

実はマグネシウムは海の中ではカルシウム以上に多い元素です。海の中にいた生命は、細胞の内外のバランスを上手に保つのにマグネシウムが必要でした。この生命は進化とともにやがて陸に上がりますが、このマグネシウムを利用して陸上でエネルギー産生を行うようになりました。つまり、数十億年以上前に海生まれの私たちの祖先が、陸でうまく生活するためには、海の中で使用していたマグネシウムがそのまま陸上でも必要だったのです。


陸上での生活を選んだ私たち哺乳類は、海藻や魚貝類のほか、植物の種実からもマグネシウムをとるようになります。

長寿研究や先住民族の健康調査において、「よく海産物を食べるところほど長寿であり健康である」というデータが多いのもご存じでしょう。実際に、マグネシウムが多く含まれる食品は、ダントツ海藻類であり、次に小魚・貝類です。また、白米ではなく雑穀類を摂取する地域、大豆食品(できれば発酵もの)を多く摂取する地域に長寿が多いのも、やはりマグネシウムが多く含まれるからかもしれません。

しかし、現代はどうでしょう。たとえば白米のように穀物は精製されマグネシウム含有量は落ち、海藻類や魚貝類を食べない人が多くなりました。ミネラルを含んだ自然塩は稀となり、多くが精製塩です。さらに、精製糖質の過剰摂取にるマグネシウム欠乏、重金属曝露によるマグネシウム吸収効率の低下、土壌疲弊による野菜のマグネシウム含有量低下など、マグネシウム不足は深刻化しています。

マグネシウム不足は多くの慢性疾患の原因となります。にもかかわらず、(医者でさえ)それがマグネシウム不足とはわからず、医薬品で対処療法をする始末となり、根治に至らず、悪循環が生まれます。

私たちの体はマグネシウムを常に欲しています。生命の素であるマグネシウムを上手に摂取していきたいものです。

ビタミンB6によるマグネシウム吸収


吉冨 信長
8月17日 9:29 ·

マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラルは体内の必須栄養素であるものの、これらは金属であるからこそ、その吸収は容易ではありません。

マグネシウムを意識して日々摂取しているのに、その効果を感じられない、と思う人も中にはいるかもしれません。マグネシウムの吸収はいくつかの要因に左右されているため、マグネシウム・リッチな食品やサプリメント補給をしているにもかかわらず、マグネシウムが不足していることもあります。その原因の一つに、実はビタミンB6不足があります。


ピリドキシンとも呼ばれているビタミンB6は、細胞にマグネシウムを輸送したり、またマグネシウムの蓄積を増やすことのできるビタミンです(Magnes Res. 1990 Jun;3(2):79-85)。これは、ビタミンB6の活性型であるピリドキサールリン酸(PLP)がマグネシウムと錯体(≒化合物)をつくることによってマグネシウム吸収量が2~3倍になると言われています。

女性に多い月経前症候群(PMS)はいくつかの臨床によって、その根本原因にマグネシウム欠乏が挙げられています。実際に、PMSの女性では、赤血球や白血球におけるマグネシウムのレベルがPMSの無い女性よりも低いこともわかっています(Obstetrics, Gynaecology and Reproductive Medicine. 2008;18(2):29-52)。

PMSにおけるある臨床研究では、B6100mg /日を1ヶ月間投与すると、血清マグネシウム濃度が高かくなったことが分かっています。他の研究においても、B6を投与するだけで、細胞中のマグネシウムレベルが著しく増加することがわかっています(Magnesium. 1986;5(1):27-32)。

そこで、イギリスのレディング大学の研究では、B6がマグネシウム吸収率をアップさせることに着目し、平均年齢32歳の女性44人を対象に、マグネシウムのみを投与したグループ、B6のみを投与したグループ、マグネシウムとB6を併用したグループ、そしてプラセボ薬を投与したグループに分け二重盲試験を行ったところ、マグネシウムとB6を併用したグループに有意な改善が見られたことを発表しています(J Womens Health Gend Based Med. 2000 Mar;9(2):131-9)。

また、イランのイスファハン医科大学の研究においても、PMSの患者(平均年齢30歳前後)を無作為に3つのグループに分け、マグネシウムのみの投与グループ、マグネシウムとB6の投与グループ、そしてプラセボ薬の投与グループ、それぞれ50人ずつにして二重盲試験を実施したところ、マグネシウムとビタミンB6の組み合わせが、マグネシウム単独投与よりも、PMS症状の軽減に役立ったことを報告しています(Iran J Nurs Midwifery Res. 2010 Dec; 15(Suppl1): 401-405)。

アメリカ精神医学協会(American Psychiatry Association)でも、マグネシウムとB6の併用がPMS症状を低下させる可能性があることを公言しています。また、B6の活性型であるPLPの血清濃度が上がるほど、がん、糖尿病、心血管疾患などの慢性疾患から軽減されることもわかっており、予防因子の一つといえます。つまり、適切なPLP濃度を維持することは、長寿に結び付くわけです。

ただし、注意しなければならないのはB6は水溶性ビタミンの中でも最も副作用のあるものです。B6のメガドースは、あらゆるアミノ酸代謝を促進するものの、一方で興奮性の神経毒を高めてしまうことがあるため、大量摂取はあまりお勧めできるものではありません。

以上により、マグネシウム吸収を促進するのにビタミンB6の補給は有効です。

サマータイム導入による健康リスク

吉冨 信長
8月21日 21:24 ·

東京オリンピックの暑さ対策として、委員会がサマータイム制(英語表記: Daylight Saving Time。以下DST)を提言し、政府が検討を指示していますが、実は海外ではさまざまな健康リスクが報告されています。夏季に時計を1時間進めることは、睡眠不足を引き起こし、さらに心血管や精神面に障害をきたす可能性があります。

アメリカ神経学会の2016年の報告では、フィンランドにおいてサマータイム(DST)導入開始から2日後に脳卒中発生率が約8%高まったことが発表されています(AAN’s 68th Annual Meeting,April 15 to 21, 2016)。ちなみに、がん患者では脳卒中の発症率が約25%も高くなり、さらに65歳以上の人では発症率は約20%高くなりました。


アメリカのコロラド大学の報告でも心臓発作が21%も増加しています(Open Heart,30 Mar 2014;1,e000019,1-5)。アラバマ大学バーミンガム校の2012年の研究では、DSTによって心臓発作のリスクが10%増加することが報告されています。

これらの機序や明確な原因はあまりわかっていませんが、時間がずれることで睡眠障害、概日リズムの急な変化、異常な免疫反応がこれらの要因として考えられています。

スウェーデンの研究でも、DSTに切り替えてからの平日3日間にやはり心臓発作リスクが増加することを報告しています(N Engl J Med 2008; 359:1966-1968)。他にも、カナダでは交通事故が増えたこと(N Engl J Med 1996; 334:924-925)、アメリカ・ミシガン州では職場でのケガが増えたこと(Journal of Applied Psychology, 94(5), 1305-1317)、ボストン医科センターでは体外受精での流産が増えたこと(Chronobiol Int. 2017;34(5):571-577)なども報告されています。

DSTによるうつの増加についても各国が発表しています。デンマークの研究では、DST導入後にうつ発症が11%増加したことを報告しています(Epidemiology, May 2017,Vol.28,Issue3,346-353)。オーストラリアの研究では、DST開始後に男性の自殺率が上昇することがわかっています(Sleep and Biological Rhythms,Jan 2008, Vol6, Issue1,22–25)。ペンシルベニア州立大学で行われた2012年の研究では、DST開始後、労働者の生産性が低下したことを発表しています(Journal of Applied Psychology 2012, Vol.97, No.5, 1068-1076)。

さて、今回のサマータイム制度導入の際、日本では早めに終業することによって電力消費のピークをシフトできるとして検討されていますが、実際に独立行政法人・産業技術総合研究所によるシミュレーションでは、14時台の電力が抑えられても、帰宅によって16時台で家庭電力が増加するため、結局は需要は伸びる可能性があるそうです。

アメリカ・インディアナ州でもDST後は住宅電力の需要を約4%増加させたことを発表しています(http://www.nber.org/papers/w14429.pdf)。オーストラリアでもDSTは決して電力エネルギー量を低下させていません(Journal of Environmental Economics and Management,Vol.56, Issue3, Nov 2008,207-220)。

海外の良い部分はマネせずに、悪い部分ばかり追随していく日本。このサマータイム制導入に限らず、私は日本の行く末にとても懸念しています。

銅・亜鉛バランス


吉冨 信長
8月23日 21:54 ·

血清での銅/亜鉛 比は1前後が理想です。もし、銅/亜鉛 比が1より大きいと、銅(Cu)が過剰で亜鉛(Zn)が不足しているという栄養状態の可能性があり、または体内で「炎症」が起きている可能性があります。

臓器や各組織で炎症が起きていると銅(Cu)の血清濃度が上昇し、同時に亜鉛(Zn)濃度は低下します(J. Nutr.,109,1979,1432-1437)。


特に高齢者ではCu/Zn比が2を超える人が多く、これは単に亜鉛不足であるか、または炎症が起きている可能性が高くなります(Biogerontology, 11 ,2010, 309-319)。

他にもCu/Zn比が高いと、心血管疾患による死亡リスクの上昇(Epidemiology, 17,2006, 308-314 ; Eur. J. Clin. Nutr., 50,1996, 431-437)、悪性腫瘍の指標(Biol. Trace Elem. Res., 94,2003,113-122 ; Cancer, 63,Feb,4,1989,726-730)。そして高齢者の全死亡率の上昇(Biogerontology, 11 ,2010,309-319)に大きく相関しています。

体内に酸化ストレスが持続していると、血液中に流れているアルブミンというタンパク質から亜鉛イオンが離れ、組織や細胞に送り込まれます。アルブミンから遊離した亜鉛イオンは、酸化ストレスが続いている組織で、メタロチオネインという強力な抗酸化タンパク質の合成を誘導するのです。こうして、血液中には亜鉛が減少していくわけです。(しかし、このときアルブミンレベルは減少せずに亜鉛のみが減少する。)

一方、銅については、酸化ストレス下では、肝臓でセルロプラスミンという銅輸送タンパク質が合成され、血液に送られます。このため、血液中には銅の濃度が上昇していくという仕組みです。血清のセルロプラスミンは抗酸化剤とし働いています。

また、慢性炎症がおきていると、組織からTNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインが上昇し、このときアルブミンの合成が抑制され(すなわち亜鉛が低下)、セルロプラスミンの合成が促進されます(すなわち銅が上昇する)。(J. Nutr., 118,1988,375-381 ; J. Immunol., 159,1997,1938-1944)

最近では、銅/亜鉛バランス比をこのような栄養パラメーターや炎症状態の指標としてだけではなく、「ホルモン」状態を表すものとして考えられてもいます。

中でも「インスリン」です。血清アルブミンの合成スピードはインスリンに依存しています。アルブミンは亜鉛を保持する役割もあることを考えると、インスリン作用の弱い糖尿病患者では血清の亜鉛濃度が低いことも納得できます(PLoS One, 8,2013, e61776)。事実、糖尿病患者はCu/Zn比が高いです。そのため、Cu/Zn比が高いということは、インスリンの効きが悪いインスリン抵抗性や、インスリン分泌不全の可能性も考えられるのです。

※また、インスリンはセルロプラスミン(=銅タンパク)の合成も抑制させるため、インスリンに何かしらの障害があると血液中のCu/Zn比を上昇させます。

他にも、ACTH、チロキシン、エストロゲン、コルチゾールのようなホルモン物質も血清のセルロプラスミン(=銅タンパク)のレベルを上げます(Physiol. Rev., 65,1985,238-309)。実際に合成コルチゾールを投与すると 、銅レベルの上昇、亜鉛レベルの低下によってCu/Zn比が上昇することがわかっています(Am. J. Med. Sci., 282,1981,68-74)。Cu/Zn比が上昇すると、余剰の銅によってノルアドレナリン・レベルを上昇させ、不安、パニック障害、睡眠障害、被害妄想などを起こしてしまうかもしれません。

以上をまとめると、血液における銅/亜鉛比は生体の状態を示す重要なパラメーターであり、栄養状態、炎症の有無、ホルモンレベルなどが推測できます。

加齢にともない、Cu/Zn比は増加することが多数報告されていますが、これは老化による酸化ストレスを抑えようとしている抗酸化タンパクの状態を示すものでもあります。

そういう意味ではアンチエイジングとしてこのCu/Zn比を低下させることを目標に持つのも一つの指標となるでしょう。また、最近では、統合失調症、うつ病、自閉症などにもCu/Zn比の上昇がみられることがあり、この数値を改善すること(炎症の抑制、栄養の補給など)を治療の一つに加えられてもいます。

噛むことは消化の第一歩


吉冨 信長
8月25日 10:22 ·

どんなに栄養密度の高い食材を選んでも、それがきちんと消化され、最終的に吸収されなければ、意味がありません。健全な消化と栄養の吸収は、食べ物をきちんと噛むという、いたって当たり前の行為から始まります。

食べ物をきちんと噛み砕くと、唾液が分泌され、さらにそれぞれの消化器官から消化酵素が放出され、最終的に食べ物を分解して体のエネルギーとして利用することができるのです。


しかし、食べ物が適切に消化されないと、消化不良、胸やけ、便秘、頭痛、食べているのに低エネルギーといった、あらゆる消化器系の症状に悩まされるのです。

フランスのある研究では、お肉を食べた後にそのタンパク質がきちんと消化・吸収されるには、個々の咀嚼(そしゃく)能力に大きく依存することを発表しています(Am J Clin Nutr. 2007 May;85(5):1286-92)。

この研究では、60〜75歳の高齢者ボランティア20名のうち、自然歯列を保持しているグループ10名と、完全な義歯のグループ10名に分け、安定同位体標識ロイシン(≒代謝の目印)を使用して、120gの牛肉を食べた後の、タンパク質の代謝率を比較しました。結果、食後のタンパク質合成は、義歯装着グループの方が自然歯列グループよりも有意に低いことがわかったのです。

つまり、タンパク質食品の消化・吸収率は、個々の咀嚼能力に大きく依存します。

アメリカ・シカゴにある食品技術研究所(IFT)の研究では、被験者らにナッツのアーモンドを10回咀嚼したグループ、25回のグループ、そして40回のグループに分けたところ、咀嚼回数が多いグループほどより大きなエネルギーを得ることができ、咀嚼回数が少ないほど失われたエネルギー量が多く、排泄も無駄に多いことがわかりました(Sciencedaily online,July 15, 2013)。

また、よく噛むことは甘いものへの依存・執着の低下や、過食の低下につながります。アメリカ実験生物学会連合(FASEB)の研究では、チューイング・ガム(ノンシュガー)を噛んでいると、ガムを噛んでいない時よりも過食がなく、特に甘いものへの依存が低下することを発表しています(ScienceDaily, 20 April 2009)。これは、よく噛むことで視床下部が刺激され、神経性ヒスタミンが生成し、ちょうどよく満腹中枢が活性化されるからです。

食事をすると腸の膨満感に悩まされるという声も多く聞くようになりました。確かに、IBS(過敏性腸症候群)やSIBO(小腸内細菌異常増殖症)、そして潰瘍性大腸炎と診断された人は、いわゆる低FODMAP食という発酵性の低い食材を選ぶことも大事です。しかし、そもそも咀嚼数が低下している現代では、咀嚼回数を上げることにより、こうした食後の膨満感や不快感を低減することは可能です。

よく噛まないで飲みこんでしまうと、結腸において腸内細菌を必要以上に増殖させてしまい、消化不良、膨満感、便秘につながることがよくあります。また、咀嚼によってきちんと適切な唾液量が分泌されれば、下腹部を弛緩させ、消化プロセスを正常に促進することができます。

最後に、食事中は水やお茶をたくさん飲むことはできるだけ避けた方がいいということも付け加えておきます。胃の中に水分が多すぎると、消化が遅くなることがあります。私が世界中で見てきた伝統社会(狩猟採集、遊牧、さつまいも農耕民、漁猟民など)では、食事中に水を飲むことはしていませんでした。彼らはよく噛んで十分な唾液を分泌させることによって嚥下(えんげ)するのです。しかし、私たちはよく噛まずにすぐに水を利用して飲みこもうとします。

よく噛むという行為は、消化過程において最も大切な第一歩となります。

卵は半熟が、消化がよい


吉冨 信長

8月27日 7:22 ·

食べ物の消化率をアップさせ、栄養素の吸収率を上げるには、「加熱」が必要です。

ベルギーのルーブン大学病院によると、生卵で食べた場合の消化率は51%だったのに対し、加熱調理された卵では91%であったことが報告されています(J Nutr. 1998 Oct;128(10):1716-22)。


熱を加えることによって卵のタンパク質の結合を物理的に弱くし、消化しやすい形を新たにつくるからです。これは、生卵をそのまま食べたとき胃酸によって胃の中でスクランブルエッグのような状態になるのを、あらかじめ加熱調理によって似た状態にしておくことで、消化力を上げるものです。

そもそも胃が生の卵白を消化するのにはとても長い時間がかかります。また、卵白の部分に入っているアビジンというタンパク質が卵黄に含まれているビオチンとの結合性が非常に高いため、これらが結合してしまうと消化酵素でさえもほとんど分解できず、ビオチンの生体利用を妨げます。実際に、卵白部がきちんと加熱されていればビオチンの吸収は阻害されません(Present Knowledge in Nutrition2012:359-374)。さらに、サルモネラのような病原菌が殻を通って卵白まで汚染することがあるため、できるだけ火を通して殺菌する必要があります。

一方、生の卵黄は、生の卵白ほどのデメリットはなく、消化も難しくありません。そうすると、卵黄は生に近い状態で、卵白は火が通ってゴム状になった状態が最適だといえます。事実、ある実験では、半熟卵であれば1~2時間で消化され、完全に固くなったゆで卵やオムレツになると3時間後に消化されました。この消化の負担を考えても、やはり半熟卵が良いと考えられます。

卵黄の成分は脂質が32%、タンパク質16%、無機成分2%、炭水化物1%、と脂質が非常に多いため、加熱によって酸化することを考慮すれば、むしろ卵黄は生に近い状態の方がいいでしょう。実際に卵黄を高温で調理すると、コレステロールが酸化してオキシステロールという成分が生成されます。血液中にこのオキシステロールが過剰になると、心臓疾患のリスクが上がるといわれています(Redox Biol. 2013 Jan 31;1:125-30)。

※ただし、酸化したコレステロールは、食品由来のものよりは、血液中で酸化されたコレステロールのものの方が有害です。実際に、卵の消費と心臓疾患にはさほど相関がありません。

また、卵を長時間・高温で調理してしまうと栄養価を下げます。長時間の高温調理ではビタミンAを約17~20%減少させ(Int J Food Sci Nutr. 2006 May-Jun;57(3-4):244-8)、抗酸化物質の量も減少させます(Food Chem. 2016 Mar 1;194:111-6)。

加熱でも低温調理で短時間であれば、より多くの栄養素を維持します。たとえば、卵を40分間加熱調理すると、ビタミンDの61%が失われていますが、短時間で調理すれば18%しか失われません(Food Chem. 2014 Apr 1;148:170-5)。

しかし、栄養面では、ニワトリの育て方やエサによって栄養価が異なるため、質の良いものを選ぶ必要があります(Poult Sci. 2011 Jul;90(7):1600-8)。

ただし、調理によって多少の栄養素を失っても、それでも卵はビタミンや抗酸化物質の宝庫であるといわれています(Nutrients. 2015 Jan 20;7(1):706-29)

以上をまとめると、消化率や栄養素保持率を考えると卵黄は生に近い状態がよく、卵白は加熱されて固まった状態がいいため、「半熟卵」がもっとも消化によいと考えられます。

メラトニンの抗酸化作用

吉冨 信長
2017年8月28日 ·


夜なかなか寝付けれない人や朝の目覚めが悪い人はメラトニン不足かもしれません。メラトニンは、脳の松果体から分泌され、睡眠の質を高めてくれるホルモンです。

「睡眠ホルモン」とよく呼ばれていますが、正確に言えばそうではありません。深部体温を適正に下げたり、血圧を下げたり、自律神経を副交感神経優位に保ってくれたりするため、夜眠るときに熟睡を促すホルモンではありますが、睡眠を直接誘発するものではありません。


さて、メラトニンの原料はセロトニンです。セロトニンはご存じのとおり精神を安定にするホルモンであり、セロトニンの原料はトリプトファンというアミノ酸(の一種)です。よって、メラトニンはトリプトファンからつくられます。この間の代謝では、ビタミンB6を中心にビタミンB1、ナイアシン、葉酸、ビタミンCが必要になり、ミネラルではマグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄などです。

ところが、こうした栄養面だけでなく、日中に太陽光をどれだけ浴びたかでメラトニンの生成量が影響します。栄養状態が良くても、太陽光を曝露せず、屋内でずっと過ごす人は、概してメラトニン生成量が少ないという結果になったそうです。(ちなみにメラトニンは夜間につくられます)

特に、早朝の日の出から朝8時台の太陽光が望ましいとされています。私がまわった世界各地の伝統社会では、確かに、狩猟採集民も牧畜民も農耕民族も早朝から数時間仕事をして、あとは夕方まで休憩するというパターンが多かったです。

メラトニンは非常に古いホルモンで、30億年以上前に進化した単細胞生物から藻類、そして植物、動物、ほぼすべての生命が保持しています。もともとは活性酸素を消去する抗酸化物質として活躍していました。というよりは、基本的な性質は抗酸化作用であり、進化の過程でホルモンの働きも担うようになったというのが最近の風潮になっています。

メラトニンの抗酸化力は、(少なく見積もっても)「ビタミンEの2倍」、「グルタチオンの5倍」もあることがわかっています。これだけの威力を発揮する理由に、メラトニンは、水にも油にも溶ける性質があるからです。つまり、水溶性でもあり脂溶性でもあるのです。さらに、血液脳関門でも血液精巣関門でも胎盤でも容易に通り抜けるため、脳の神経細胞をはじめ、多くの抹消細胞をあらゆる障害から守ってくれます。

メラトニンで最近注目されていことのは、抗がん作用です。これについては後日詳しくまとめますが、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、肺がんなどに特に効果的であるという報告があります。

ビタミンCはたいていは重要な抗酸化を発揮しますが、デメリットとして遊離した三価鉄(Fe3+)に遭遇した場合に、二価鉄に還元するため、これが過酸化水素と反応すると、いわゆるフェントン反応を起こしてしまい、最強のフリーラジカルであるヒドロキシラジカルを発生させる最悪の立役者となってしまうことです。(もちろん、ビタミンCに罪はなく、遊離鉄が多いことが問題です)

ビタミンEにしても、その抗酸化力でフリーラジカルを安定させても、自身が酸化型になってしまうため、グルタチオンが周囲に無いと、結果フリーラジカルとして働いてしまいますし、SOD酵素も大量に存在してしまうと、結果大量の過酸化水素を生成してしまう(その後、遊離鉄に出くわし水酸基(OH-)をつくってしまう、水酸基はフリーラジカルの中でも破壊的)という皮肉がおとずれてしまいます。

しかし、メラトニンには、仮に大量摂取(または大量分泌)しても、こうした水酸基や過酸化水素を副産物としてつくりだすことはありません。(とはいえホルモンですので、外からの摂取量や頻度には十分気をつけること)

メラトニンはホルモンの性質もあることから、細胞核の部分で非常に濃度が高いです。DNAを活性酸素の攻撃から防御していると言われています。

メラトニンは他にも免疫系に大きく作用し、脳や心臓に多くの効果をもたらします。性ホルモンの正常なコントロール、不整脈、血圧やコレステロールの正常化にも効果的です。高齢になると、メラトニン分泌はどうしても落ちますので、意識して原料となる栄養を補うか、日本では販売されていませんがメラトニンのサプリメント(輸入品)を摂取するのもいいでしょう。

メラトニンは、生涯をかけて私たちの強い味方となります。ぜひ意識しましょう。

脳内ミネラル「リチウム」の重要性


吉冨 信長

8月29日 21:39 ·

誤解をおそれずに言うのなら、脳のミネラルで最も重要なのは実は「リチウム」かもしれません。リチウムはその必要量が超微量であることから、また過剰症ばかりが挙げられてしまうことから、もっとも誤解されている微量ミネラルの一つです。

リチウムは脳神経の遺伝子と栄養素を結びつける、非常に重要なミネラルです。しかし、からだ全体から見ると必要量が微量なため、つい軽視されてしまい、そのためか世界的にも欠乏しやすいミネラルでもあります。


さらに、栄養学の教科書や医療現場においてもリチウムの栄養指導をほとんど見ることはありません(リーマス処方は別として)。必要量が少ないだけに油断してしまい、結果欠乏してしまうことがあるのです。

脳におけるリチウムの役割として、不安、気分、怒りなどホルモンによって動かされる感情のコントロールに働いています。

実際に、アメリカ、ドイツ、オーストリアの成人の中には、毛髪のリチウム濃度が低い人が少なからずいることがわかっており、特に学習障害のある人や犯罪者では異常に低かったことが報告されています(Biol Trace Elem Res. 1992 Aug;34(2):161-76)。

アメリカのある研究では、テキサス州27郡のそれぞれの水道水に含まれるリチウム濃度と、犯罪率や自殺率などの関係を調査したところ、リチウム濃度の高い郡では強盗発生率や暴力による犯罪率そして自殺率が有意に低かったことがわかっています(Biol Trace Elem Res. 1990 May;25(2):105-13)。また、リチウム濃度が高いと、アヘンやコカインなど麻薬による逮捕の発生率も低下していたのです。

ギリシャにおいても、34の各県から149サンプルの水道水を検査したところ、リチウム濃度が高いところほど自殺率が低下する傾向があることが発表されています(Biol Trace Elem Res. 2013 Dec;156(1-3):376-9)。同研究チームは、水道水のリチウム濃度が高い県は殺人事件率が減少する傾向にあることも報告しています(Biol Trace Elem Res. 2015 Apr;164(2):165-8)。

リチウムによる脳への改善効果は今にはじまったことではありません。実は1800年代後半から、うつ病または躁うつ病を治療するためにリチウムが使われていました。しかし、当時の安易な投薬や投薬量の知識不足などによって、その実績は不安定だったようです。また、7Up(セブンアップ)というレモン風味の炭酸飲料をご存じでしょうか。実は販売が開始された1920年代から1950年代までは、気分昂揚作用のためにリチウムが含まれていました。

リチウムはこうした感情のコントロール、気分、怒りや攻撃の抑制などの作用だけでなく、ビタミンB12や葉酸を脳の細胞に輸送するのに必須である(Biol Trace Elem Res. 1992 Aug;34(2):161-76)ことがわかってから、最近では遺伝栄養療法や精神栄養学においてその重要性と摂取の推奨が少しずつリバイバルし始めています。

実際に、B12や葉酸の輸送は、リチウム欠乏によって阻害され、リチウム補給によって回復することがわかっています。ビタミンB12は葉酸とともにセロトニン、メラトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンの合成に関与しているBH4(テトラヒドロビオプテリン)に必要なビタミンです。

自閉症回復のプロトコールを確立しているアメリカのDr.Amy Yaskoは、すべての自閉症児にリチウム濃度を確認することを、提案しています。リチウムは毛髪メタル検査(HMT)によって確認できます。

リチウムは神経保護作用があり、報告では脳虚血状態において神経保護効果があったことや、過剰となったグルタミン酸による興奮毒性からの保護も示されています。また、最近では水銀に曝露した患者にもリチウム補給が大きなメリットをもたらすことがわかっています。

そもそも、水銀毒の症状には、興奮性、イライラ、うつ、不安、ストレスに対する感受性、感情の不安定などがありますが、興味深いことに、これらはリチウム欠乏の症状に似ています。

これはおそらく、水銀が興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸のレベルを脳内で上昇させるというところにあり、リチウムはグルタミン酸受容体に対する調節や抑制作用があるからです。

リチウムの安全かつ有益となる摂取量は1~5mgと言われています(最大でも10mg)。副作用が問題となっている炭酸リチウムであるリーマスなどは1錠100~200mg、最大例1200mg/日の大量処方であり、これとは区別する必要があります。

以上のように、リチウムは脳において非常に重要なミネラルです。実際に、あらゆる精神障害において、このリチウム欠乏との相関も指摘されています。栄養療法の第一歩としてリチウム補給を掲げる医療関係者も増えています。つまり、リチウムを知らずして栄養学を語れないのです。リチウムはそういう意味でも、脳における最も重要なミネラルです。

リチウムの働きは多岐にわたるため、ここでは書ききれませんが、今後も少しずつアップしていく予定です。

ちなみに、リチウムを多く含む食材は、マメ類、海藻類、小魚や煮干し、キノコ類、トマト、キュウリ、キャベツなどの野菜です。リチウムの重要性を見直しましょう。

※リチウムを勉強したい方は、リチウム栄養研究の第一人者であるDr. G.N. Schrauzerの論文を拾ってみてください。また、リチウムを重視した栄養療法を実践しているDr.Amy Yasko関連の著書もおすすめです。

ヒトがビタミンC合成能を失ったわけ


吉冨 信長
2017年8月31日 ·

ビタミンCを体内で合成できない代表的な動物は、ヒト、サル、モルモットです。ただし、本当に合成能が0(ゼロ)なのかは、まだわかっていません。もしかすると、微量で合成されているかもしれません。ここではビタミンC合成能を失ったことを前提に、話をすすめていきます。

さて、ヒトがビタミンC合成能を失った理由として、定説(仮説)では、「果実などをはじめビタミンC食品が簡単に得られるようになったから」、「脳の拡大とエネルギー消費にともない、ビタミンCの原料であるブドウ糖を優先したため」などさまざまです。


ある調査では、ゴリラは1日に4~5グラムのビタミンCを生息する森から摂取しているそうです。初期のヒトも1日に2グラム以上は摂取できていたという推計もあります。

ビタミンCは言わずもがな植物性食品に多く含まれるビタミンです。厚労省によるビタミンCの一日の推奨摂取量は成人で約100mgです。たとえば、ピーマンなら約1袋(150g)食べれば厚労省の推奨摂取量100mgが摂れます。これらをきちんと食べるには意外と結構な量ですし、加熱する場合はもっと食べる必要があります。しかも、毎日食べるのって結構大変ですし、 野菜をはじめとした植物性には「旬」というものがあり、食用できる植物には必ず端境期(はざかいき)が訪れ、季節の変わり目をはじめとした時期によっては、全く摂取できないことも自然界ではありえるのです(生息地にもよりますが)。現代は、農作物がたくさんあり、南から北までの産地リレーやハウス栽培、輸入食品などを通して年中食べることができますが、自然を相手にした本来の生態系ではビタミンC不足に陥ることが少なくないはずです。

分子栄養学や栄養療法的には1グラム以上の摂取を目標とすることが多いですね。レモン50個以上です。これは実に不自然だと思いませんか。(自然界の中では不自然だけど、生化学的には、というよりは現実的には、私も1日1グラム以上の摂取をすすめています)

また、脳の拡大による説ですが、これは矛盾が多いです。サルはヒトと同じくビタミンC合成能を失っていますが、脳化指数はヒトのように高くはありませんし、イルカは脳化指数がヒトに近いぐらい高いですがビタミンC合成をしています。

で、これは私の仮説ですが(今のところの)、ヒトはビタミンCを生理的にはさほど必要としなくなったからではないかと思います。ただし、ビタミンは多くとると生理作用以上の働きをし、つまり薬効的に働きますので、あくまで生理作用の範囲内の話です。

たとえば、亜鉛にはビタミンCの節約効果があります。これは日本人の研究者が発表しています。亜鉛が生体内に充足していると、ビタミンCの必要量が減ることをいっています。ビタミンCを自然界で必要量摂取するのは困難ですが、亜鉛はさほど難しくはありません。また、別の研究で、風邪ひきさんに対する亜鉛とビタミンCのそれぞれの効果の比較研究があります。結果、亜鉛はビタミンCとは比べ物にならないほど風邪に効くことがわかっています。亜鉛はビタミンCとは異なり、ウイルスを直接殺す効果があります。さらに、亜鉛は免疫応答も刺激し、感染の早期終結をもたらします。つまり、感染に関しては、ビタミンC量が少なくとも、亜鉛の充足によって、解決できることを示唆しています。

体内にはビタミンCよりも抗酸化力の強いものが多く存在ます。SOD酵素はビタミンCの約3,500倍あります。ヒトはSOD酵素の活性が極めて高い動物ですね。他、アスタキサンチンはビタミンCの約65~1,000倍、ビタミンEはビタミンCの約5倍、メラトニンはビタミンCの約10倍です。脂質過酸化の連鎖反応をストップするには、まずビタミンEが働きますね。そしてラジカルとなったビタミンEを還元するのはビタミンCだと教科書では教わります。しかし、実際には、ビタミンCがなくとも、ユビキノン、グルタチオン、NADPHがそこにあれば、それぞれが直接、ラジカル型となったビタミンEを還元することができるのです。

アフリカのマサイ族遊牧民や伝統的なイヌイットは植物性食品を摂取する機会がほとんどありませんので、血中のビタミンC濃度はかなり低いですが、壊血病を患うこともなければ、いたって健康体です。なぜなら、ビタミンCはブドウ糖と代謝経路において競合するため、ブドウ糖摂取が少ない彼らはビタミンCを細胞内に効率的よく取り込むからです。

ビタミンC摂取機会が少ないと、尿細管でビタミンCは再吸収されるため、全ては排泄されない仕組みになっています。

ビタミンCは遊離鉄と反応すると、フェントン反応をおこし、猛毒のヒドロキシラジカルを生成してしまいます。がん細胞を倒すのにこのヒドロキシラジカルを武器として戦えますが、昔の人はほとんどガンがなかったといえますので、正常細胞には猛毒となってしまうヒドロキシラジカルをつくるビタミンCを、生体は進化的に避けていたのかもしれません。実際に、抗酸化サプリを長期で服用している人ほど寿命が短いという統計も、私はあながち間違っていないと思っています(ただし、安いサプリメントは栄養素以外の添加物などが問題で、これが悪さをしている可能性もある)。

以上はビタミンCの抗酸化作用の面だけで判断したもので、では、コラーゲン生成はどうなるのか?他の代謝で使われる分はどうなるのか?という疑問についてはまだ答えができていません。

しかし、わたしは伝統社会(狩猟採集民、遊牧民、農耕民)を見てきた中で、ミネラルを充足している感じはありましたが、やはりビタミンCを必要用量摂取している民族はほぼないと感じました。

ヒトがビタミンC合成能を失った理由は、外部から簡単に獲得できるようになったから、ではなく、もしかすると、足りなくても他の酵素やミネラルで解決できたから、というのが答えかもしれません。もちろん、これについては、いまだ謎です。

あくまで、これはコラムですので、現代人はやはり現実的に1日1グラム以上を目標に摂取した方がいいと思います。

亜鉛とアトピー

吉冨 信長
2016年8月31日 ·

アトピーの原因の一つに亜鉛不足があります。乳幼児の亜鉛欠乏はお母さんの母乳が低亜鉛状態であることが原因であったり、成人の亜鉛欠乏は食事によるミネラル摂取不足などが原因です。

亜鉛は300種類以上の酵素が働くときに関与している補因子であり、これが欠乏すると酵素の働きがうまくいきません。


例えば、抗炎症作用を発揮するオメガ3系の脂質代謝において、亜鉛が不足しているとアトピーを抑えるプロスタグランジン(3)が産生されません。α-リノレン酸からEPAに代謝されるには、デルタ-6-デサチュラーゼやデルタ-5-デサチュラーゼという酵素が必要ですが、これらは亜鉛がないと活性化しません(Lipids.1982 Mar;17(3):129-35)。ちなみにこのデサチュラーゼの活性には、亜鉛以外にマグネシウム、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンCの補因子が必要です。

また、亜鉛はタンパク質の分解酵素(胃酸やプロテアーゼなど)を生成・分泌するのに不可欠なため、不足してしまうとタンパク質の未消化物が残ってしまい、アレルギー反応を起こしてしまいます。

同時に白血球による活性酸素の大量発生により、炎症が持続してしまうわけですが、これを消去するSOD酵素にも亜鉛は重要な因子として関与しています(細胞質のZn-SOD)。

亜鉛には腸の内壁を正常化にする働きがあります。アトピーの多く人が腸の状態が悪く、ミネラルの吸収が悪いわけですが、亜鉛を多く投与するごとに、それだけ吸収率が上がり、効果が表れます。これは亜鉛の持続的な多量摂取により、腸の粘膜の再生力が向上し、炎症も低下したことで吸収率が上昇したことが考えられます。

他にも亜鉛欠乏はさまざまなところで生体に関与しています(ホルモン代謝など)。亜鉛摂取はアトピーに対する栄養療法の一つとして、非常に重要な因子であると考えられます。

※治癒目的の亜鉛過剰摂取は、必ず銅の摂取も考慮しましょう。

リノール酸を減らさないとオメガ3の効果は発揮できない

吉冨 信長
2015年8月31日 ·

オメガ3サプリやオメガ3油の効果の是非、本当に効くのかというコメントや記事を最近よく目にします。まず言えることは、リノール酸を減らさなければ、オメガ3の効果は期待できないということです。

リノール酸食を基本としていたラットに、オメガ3食に変えて、その後の行動を考察した実験研究があります(Okaniwa Y,1996)


エサをリノール酸食からえごま油食に変えた群、エサをリノール酸食から20%だけDHA(オメガ3)で置き換えたものに変えた群で実験しました。前者は明度識別学習能は回復しました。ところが、後者は脳のDHAはほぼ回復したものの、オメガ6(ドコサペンタエン酸)の量が十分に減らずに、結局学習能は回復しなかったのです。

後者はその後、エサのリノール酸をさらに減らし、その分DHAを加えることで学習能は回復することができました。

人間は他の動物のように食生活がそう単純ではありません。近代化が進み、食生活や内容に多様性があらわれ、同じ地域に住む人でも個々で異なるために、これらの効果を試しても、結果は人によって異なってしまうことがあります。

やはり、これらの効果を試すには、それなりに根幹から食生活や内容を見直し、シンプルな食事を続けることが大事になってきそうです。

おすすめ!食用ほおずき


吉冨 信長

8月31日 22:27 ·

(※以下は観賞用ほおずきのことではありません。)

夏~秋にかけて、私は食用ほおずき(国産)をよく食べます。日本ではまだまだ知名度が低いですが、食用ほおずきはもともと南米原産で、現地では通称ゴールデンベリーやインカベリーまたはピチュベリーと呼ばれています。


実はこの食用ほおずき、非常に栄養価が高く、古くから炎症止めや感染症薬など民間の自然療法として利用されてきました。ちなみに、メキシコ料理で使用されるサルサソースは、食用ほおずきの大きい品種であるトマティーヨ(緑色)を原料にしています。

食用ほおずきのメリットは何といってもその抗酸化成分にあります。脂質過酸化をくい止めたり、活性酸素に対して強い抗酸化力と捕捉能があり、実験ではαトコフェロール(ビタミンE)よりも強い抗酸化活性を見出しています(Biol Pharm Bull. 2005 Jun;28(6):963-6)。

食用ほおずきの成分にはがん細胞をアポトーシス(自殺死)させる抗がん作用があります(Cancer Lett. 2004 Nov 25;215(2):199-208)。

がん細胞は転移や浸潤を拡大するときに、間質細胞などを相手にIL-6やIL-8などの炎症性サイトカインやMCP-1などの炎症性ケモカインの分泌を亢進させますが、食用ほおずきにはこれらの炎症物質を低減させる働きがあります(J Evid Based Complementary Altern Med. 2017 Oct;22(4):777-787)。

そして、特に、肺がんに対する抗腫瘍効果(Asian Pac J Cancer Prev. 2015;16(14):5863-8)や、抗増殖効果が認められています(BMC Cancer. 2010; 10: 46)。

食用ほおずきに含まれているビタノライド(ウィタノリド)という成分は海外では強力な薬効として評価されています。たとえば、ビタノライドはヒト乳がん細胞における周期停止やアポトーシスを誘導し、抗がん作用を発揮します(PLoS One. 2012; 7(5): e37764)。また、リウマチ・アレルギー疾患、がんなどで活性が亢進する転写因子NF-κBを阻害することもわかっています(J Biol Chem. 2007 Feb 16;282(7):4253-64)。そもそも、NF-κBは、がんのほとんどの種類で活性しており、がんの発症と進行に重要な役割を果たす炎症性物質です。

食用ほおずきは他にも、抗糖尿病効果もあります(European Journal of Applied Sciences 5 (1): 01-06, 2013)。また、古くから民間療法で利用されてきたのは肝炎に対する治療であり、ラットを使った実験でも、SOD酵素、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素を高めることによって、改善する機序がわかっています(Journal Pharmaceutical Biology Vol.46, 2008,10-11)。

なお、お盆の時期に飾られる鑑賞用ほおずきは、以上のような食用のものではなく、むしろ有害のため、食べないようにしてください。また、ほおずき自体、害虫が多く寄ってくる作物のため、残留農薬が懸念されますので、できるだけ無農薬のものを選ぶのがいいと思います。また、南米産のドライフルーツのものも市販されています。私もドライフルーツに加工されたオーガニックのインカベリーをたまに買っては食べています。

食用ほおずき、もし店頭で見かけたらぜひ試してみてくださいね。とても美味しいですよ。ただし、食べ過ぎは禁物です。

リチウムによる脳神経の健全化


吉冨 信長

9月1日 22:44 ·

リチウムの重要性を語ると、おそらく多くの人が否定的な反応をとることでしょう。なぜなら、双極性障害などに用いられる気分安定薬リーマス(炭酸リチウム)の副作用が問題視されているからです。

しかし、重要なことは、ミネラルなどの栄養素には「最適量」があり、その量をはるかに超えた場合は毒となり、逆に少なすぎる摂取量は欠乏症になることです。そして、このリチウムは少しの量が最適量ということです。リーマスで使用されるリチウムは100mg/日単位の量であり、私たちが本来必要とされる最適量は2~5mg/日程度の量です。


つまり、高リチウムであっても低リチウムであっても良い結果とならず、適正なリチウム量を維持させることが、脳神経作用の恒常性や精神面の健全化をはかる方法の一つとなるのです。(※毛髪メタル検査などで状態がわかります)

リチウムはおもに野菜、海藻類、マメ類、全粒穀物などの植物性食品(または魚貝類など)に多く含まれるミネラルですが、これらの含有量はその地域の地下水や土壌のミネラル組成に大きく異なります(J Am Coll Nutr. 2002 Feb;21(1):14-21)。そのため、その土地にリチウム濃度が低いと、犯罪率や自殺率が有意に高いことがわかっています(Biol Trace Elem Res. 1990 May;25(2):105-13)。

実はここ日本でも、リチウム濃度と自殺率の逆相関が証明された研究があります(Br J Psychiatry. 2009 May;194(5):464-5)。これは、大分県の18市町村(計1,206,174人)において水道水のリチウム濃度を調べたところ、リチウム濃度が低い市町村ほど自殺率が高くなることがわかったのです。さらに、この研究で寿命との関係を調べたところ、リチウム濃度が高くなるほど(あくまで最適量の範囲)、寿命が長くなることがわかり、アンチエイジングとしても必須であることが報告されています(Eur J Nutr. 2011 Aug;50(5):387-9)。

ロシアの研究では、リチウムが脳ミトコンドリアのエネルギー代謝を回復させることが実証されています(Zh Nevropatol Psikhiatr Im S S Korsakova. 1977;77(8):1179-86)。これは、リチウム投与によって脳内ミトコンドリアのエネルギー代謝や抗酸化力が向上し、躁うつ病症状や統合失調症にある攻撃性が減少したという報告です。また、イタリアの研究でも、リチウムはミトコンドリアの数を増やすことが報告されています(Autophagy. 2008 May;4(4):527-30. Epub 2008 Mar 17)。

リチウムは、(怒り・不安・恐怖のホルモンである)アドレナリンやノルアドレナリン刺激によって増加したcAMPという細胞内シグナル伝達のセカンドメッセンジャーを抑制します(川崎医学会誌 13(2), 128-132, 1987)。つまり、リチウムはアドレナリンの過剰分泌をブロックするのです。

リチウムは神経保護作用があります(Front Neurosci. 2014; 8: 457)。たとえば、脳内に過剰なグルタミン酸が存在するとこれらは興奮毒素となり、脳神経内のカルシウム濃度を向上させてしまい、神経細胞がアポトーシス(自殺死)してしまいますが、ここに最適量のリチウムがあれば神経細胞死を予防できます。

さらに、リチウムは神経細胞の樹状突起の長さを伸ばし、その数を増加させます。これによって高性能の神経伝達が可能となります。

また、特筆すべきは、リチウムは脳由来神経栄養因子とよばれるBDNFを増加させることです。BDNFは今ある神経細胞を正常に維持させ、新しい神経細胞やシナプスに分化することを促す重要なタンパク質です。(ちなみにビタミンではナイアシンがBDNFの発現を向上させます。)

リチウムはアルツハイマーやそれに関連した認知症を予防します(Neurodegener Dis. 2008;5(3-4):247-9)。リチウムは記憶障害の予防やβアミロイドの減少に功を奏しています(PLoS One. 2015 Nov 25;10(11):e0142267)。また、低用量リチウム投与がアルツハイマー病の認知障害の進行を遅らせます(Curr Alzheimer Res. 2013 Jan;10(1):104-7)。

リチウムは炎症性代謝産物をつくるアラキドン酸の代謝回転率を減少させることがわかっています(Neurosci Lett. 1996 Dec 20;220(3):171-4)。アメリカの国立衛生研究所の研究では、リチウムがアラキドン酸の代謝産物プロスタグランジンE2の脳内濃度を低下させたことが報告されています(Mol Psychiatry. 2002;7(8):845-50)。

最後に注意してい欲しいのは、カフェイン飲料の摂取です。カフェインはリチウムの働きを阻害する可能性があります(Biol Psychiatry. 1995 Mar 1;37(5):348-50)。

以上により、リチウムは脳内の必須ミネラルであり、神経細胞の保護や健全化、そして脳内ホルモンの恒常性や興奮抑制に大きな役割を果たしています。しかし、まだまだ医療現場では見逃されているミネラルでもあります。

リチウム源の栄養素としてはアスパラギン酸リチウムやオロチン酸リチウムが一般ですが、アスパラギン酸の過剰摂取は興奮毒に繋がる可能性があることから、オロチン酸リチウムを選択するのがいいでしょう。とはいえ、野菜、海藻類、豆類、全粒穀物からリチウムを摂取し、リチウムの重要性を見直していきましょう。

欧州心臓学会2018『低炭水化物食は死亡リスクを高める』(2018.8.28)

先日(2018.8.28)、ドイツ・ミュンヘンで行われたヨーロッパ心臓学会の集会で『低炭水化物食は死亡リスクを高める』という発表がされました。

この新しい研究は、ポーランドのウッツ医科大学のDr.Maciej Banachらによるもので、1999~2010年の国民健康栄養調査(NHANES)に参加した24,825人を対象に、低炭水化物食と死亡リスクを調査したものです。


結果、平均6.4年間のフォローアップで低炭水化物食をしていた人は総死亡リスクが32%高くなり、さらに、死因別のリスクでは冠状動脈性心疾患が51%、脳血管疾患が50%、癌が35%もそれぞれ増加したことがわかりました。なお、この結果は、高齢者、非肥満者の間で最も強かったと指摘しています。

同研究チームは、メタ分析によっても同様の結果を導いています。これは、447,506名を対象にした平均追跡15.6年間の7つの大規模前向きコホート研究をメタ分析で調査したところ、低炭水化物食は総死亡リスクが15%高く、冠状動脈性心疾患のリスクが13%高く、がんは8%高かったことが報告されました。

研究者らは、「低炭水化物ダイエットは、短期的には体重の減少、血圧の低下、血糖コントロールの改善に有効かもしれないが、長期的には全死亡リスクや慢性疾患のリスクを高める可能性がある」と締めくくっています。

そもそも、なぜこのような炭水化物論争は絶えないのでしょうか。それは、スタンスの違いにあるかもしれません。つまり、「短期的な活力向上=長期的な健康維持」とは必ずしも言えないからです。

野生動物だった時(狩猟採集時代)の私たちの食事目標や栄養目標は、「生殖力や活動力」に最適なものを選択していました。ところが、私たちヒトは狩猟採集から脱却し、農耕や文明がはじまってから、あきらかに生活スタイルや生きるための概念が変わってきています。それは、最終的な食事目標を「健康長寿」と変えたことです。

考えてみてください。ヒト以外の野生動物の食事目標は、決して健康長寿が目的というわけではなく、生殖力や活動力に見合った最適な量です。

野生動物が食性を維持しようという目的は、決して健康長寿ではなく、活動力と生殖力に最適の量を満たすことです。しかし、ヒトは文明を築き、野生動物とは他の道を歩みました。つまり、狩猟採集時代の食事から離れ、農耕による炭水化物を利用し、ヒトは子孫繁栄以外に自身の健康長寿を目指すようになったのです。

実際に、シドニー大学による新しい考古学研究では、「デンプン質の炭水化物こそがヒトの脳の進化の主な要因であり、旧石器時代のヒトはいわゆるパレオダイエットでは進化しなかったことを報告しています(Hardy K,Thomas M,Brown K,2015)。

それまでは、「火の使用と肉食」がヒトの脳進化の主要因とされてきていましたが、現在では「デンプン質食品を、火を使って調理することこそが、人間の脳の成長を引き起こした。炭水化物は、タンパク質とともに、近代的な大脳の人間の進化に不可欠であることを示唆している。」というパラダイムの変化が起きています。

短期的な活力や生殖力を目指す人は確かに低糖質・高動物性食が有効かもしれません。しかし、あくまで健康長寿という視点では、あらゆる統計データが示すように、これらは覆されています。

低炭水化物食は短期的な治療食として有効な場合がありますが、やはり長期的にはおすすめできるものではないと思っています。しかし、この論争は終わることはないでしょうね、なぜなら上述したように人それぞれスタンスの違いにあるからです。

参照:https://www.escardio.org/The-ESC/Press-Office/Press-releases/Low-carbohydrate-diets-are-unsafe-and-should-be-avoided

この食材は身体によいと聞いたからと言って、すぐにそれを「食べ過ぎる」ようなことはやめた方がいいでしょう。

この食材は身体によいと聞いたからと言って、すぐにそれを「食べ過ぎる」ようなことはやめた方がいいでしょう。

身体によいその食材が「高摂取」によって発揮するとは限りません。むしろ、高摂取になると副反応の方が目立つ場合もあります。

そして、低用量の摂取こそが、私たちの身体に大きな恩恵をもらたらすものも沢山あることを知っておいてください。


人はわかりやすいシンプルな情報を求めます。それは決して悪いことではありませんが、それとは反面、私たちの身体の仕組みは非常に複雑であり、文明や医療の開花によって大きく個体差があらわれているため、シンプルに行かないことが多いのです。

栄養学や機能性医学は全く発展途上の分野です。栄養学の悪いところは、その栄養素の良い点だけもてはやされ、その面しか広がらないことにあります。デメリットの部分はないがしろにされることが多いのです。

栄養療法=安全とは決して言えないのです。いまだに未知の部分や未知の成分が多く、常に新しい情報と過去の定説との検証が議論の的となり、現に矛盾だらけです。

だからこそ、治療や予防の体系化はいまだ帰着できないところが多いのです。この日々刻々と変化する新しい情報や古き良き伝統的な教え(リバイバル)をいつでも受け入れることができるように、私たちの脳みそも常に柔軟にしておく必要があります。頭の固い人には何を言っても無駄ですし、相手にする必要はありません。

テレビやSNSでの、安易な考えや情報には特に注意が必要です。もっともらしい理論こそ、そこには大きな落とし穴があると、私は実感しています。正直、何度やられたことかと思いますが、よくよく考えれば鵜呑みにした自分も悪いのです。中途半端な知識は犯罪となりえます。

栄養とは最適量があり、高用量で発揮するもの、低用量で発揮するもの、さらに個体差によって変わるもの、単体で攻めた方が良いパターン、多種類の低用量で攻めた方が良いパターン、いろいろあります。

〇〇こそが、人類最強の食事なんてものは、全くもって存在しないのです。

甘いもの依存症

栄養バランスの良い食事をきちんとしていれば、脳の神経細胞が正常な調節機構が働き、甘いものへの依存が無くなってきます。

ある実験では、栄養バランスの良い食事をしたラットと、栄養が貧しく悪い食事をしたラットのグループにそれぞれ分け、いつでも砂糖水を摂取できるようにしたところ、栄養が貧しい食事をしたラットグループの方が砂糖水の消費量が大きいことがわかっています。


さらに、この栄養状態が悪いラットに、今度は栄養バランスの良い食事を与え続けたところ、砂糖の消費量が減少したことがわかっています。

つまり、栄養を改善していけば、脳の神経細胞にこれらがきちんと届き、食事に対する自主制御と調節が働きます。これは当然、私たち人にも言えることです。

また、食材にこだわることも大切です。自然に近い状態で育てられた作物には、様々な外因ストレスから身を守ろうと、自身の中に高い栄養価を保持します。そうした食材を鮮度の良いうちに選んでいけば、私たちの身体は不思議と「量」を欲しません(余計な過食がなくなるという意味です)。高い栄養価を効率よく体に取り込めるのです。

それによって、消化器官に余計な負担をかけず、さらに未消化物による腐敗や異常な酸性化も減少します。

気がついたら、いつもいつも甘いものや糖分ばかり身体が求めているようであれば、いずれかの栄養素が不足しているかもしれません。

マグネシウムは600種類以上の酵素補因子

マグネシウム(Mg2+)は生体内の325種類以上の酵素反応において補因子として関与しているということが通説ですが、最近では、どんなに少なく見積もっても、600種類以上の酵素反応(エネルギー代謝やタンパク質合成など)がマグネシウムに依存していると報告されています(Jeroen H F de Baaij,2015)。

間接的な関与も含めれば、マグネシウムは生体の主な代謝や生化学的な反応のほとんどすべてに関与しています。よって、マグネシウムが不足していれば、必ず何らかの異変を感じることができるはずです。ちなみに、鉄は体内に3~5グラムあることに対し、マグネシウムは約25グラムは必要です。

厳密に言えばマグネシウムの充足の指標は、血液検査(血清における濃度)では判断できません、あくまでカルシウムとのバランスの目安にはなるでしょう。なぜなら、マグネシウムが最も高濃度に含まれる臓器(歯や骨をのぞいて)は、 脳、心臓、骨格筋だからです。(※毛髪ミネラル検査でマグネシウムバランスの指標を確かめることはできます)

脳、心臓、骨格筋は他臓器と比べ、エネルギー量の需要や代謝サイクルが特に大きいため、必然的にマグネシウム(Mg2+)を必要とするからです。実際に、多くの疫学調査において、マグネシウム不足や、カルマグ比(Ca/Mg)の向上は、下記のようなリスクが報告されています。


脳 → 脳梗塞、脳卒中、偏頭痛、不安神経症、うつ病、脳の興奮、不眠(メラトニン不足)など。


心臓 → 狭心症、高血圧、不整脈、心筋梗塞、ほか心疾患のリスク


骨格筋 → けいれん、こむら返りなど。


※老化が進行している体の組織には、マグネシウムの3倍量のカルシウムが見られる。


また、マグネシウムは他の栄養素とのバランスを保ちます。たとえば、マグネシウムが欠乏していると鉄過剰症や他ミネラルの過剰を起こしてしまうという報告があります。マグネシウムはミネラルをまとめるマネージャー役といってもいいのです。

ビタミンB1を活性化する酵素(とビタミンB1が関与する酵素群)はほぼすべてマグネシウムが関与していると言っても過言ではありません。

マグネシウムはビタミンD(普段は非活性)を体内で活性型に変換するのに必要なため、ビタミンDを非活性から活性型に大量に変換するとき、各組織でマグネシウムは「使い果たされる」ことが多いのです。そのため、ビタミンDの副作用(不眠症、筋肉痙攣、動悸、便秘、偏頭痛等)を並べてみると、まさに、マグネシウム欠乏による症状と全く同じです。ビタミンDを正常に働かせるにはマグネシウムありきなのです。(※仮に日光浴や食事摂取によってビタミンDを保持できるようになっても、体内にマグネシウムが不足していれば、ビタミンDの血中濃度は上がらないことが多いというアメリカの報告があります。)

栄養素というのは単独で働くものではないということを再認識し、あくまでバランスが大切です。ここでいうバランスは、厚労省が推奨しているような「食材を均等に摂る」というようなイメージではなく、生体の働きが活性化する「黄金比」や摂取量があることを言っています。もちろん生体にはこの黄金比を維持する恒常性がありますがそれには限界があり、普段の食事でできるだけ黄金比を保つする必要があるのです。

マグネシウムを多く含む食材は、にがり、海藻類をはじめ、ごま、豆味噌、マメ類、ナッツ類、緑葉野菜、小魚などです。

ぜひ日々の食卓でマグネシウムを意識して摂取しましょう。

その症状は「フェノール不耐症」かも?

その症状は「フェノール不耐症」かも?

果物やナッツなどを食べた後、鼻づまりや鼻炎、発疹や皮膚のトラブル、偏頭痛、耳鳴り、ぜんそく、不適切な笑い、などの症状が見られる人は、もしかするとフェノール不耐症(フェノール感受性、過敏症とも)かもしれません。

フェノールとは、植物が害虫や動物から身を守るために合成した成分であり、抗菌作用や殺虫作用、そして抗酸化作用のあるもので、主に植物の皮や種子に多く含まれます。

一般に、ヒトのような大型哺乳動物が植物のフェノールを摂取すれば、抗酸化作用など何らかの恩恵を受けることがありますが、場合によってはその副作用に悩まされることがあります。

フェノールは、六角形のベンゼン環にヒドロキシ基(-OH)がついた構造をしている芳香族化合物です。フェノールには、抗酸化成分としてよく挙げられるポリフェノールをはじめ、サリチル酸、ヒスタミンなどのアミン、グルタミン酸、他フェノール類などが代表的です。また、添加物として使用されている香料や着色料、BHAやBHTなどの防腐剤、VOC(揮発性有機化合物)もフェノール類似物質です。

基本的にフェノールを摂取すると肝臓のPST(フェノール硫黄転移酵素)という酵素によって硫酸化され水溶性にしてから、尿から排泄するという仕組みがあります。ところが、この硫酸化が上手くいかずに、フェノールが排泄されずに組織に蓄積されたままになると、悪化して上述したような症状が出てくることがあるのです。

これをフェノール不耐症(過敏症)といいます。
フェノール不耐症になると、排泄されなかったフェノールは血液脳関門を容易に通るため、種類によっては神経伝達物質の受容体やホルモンの受容体に結合してしまい、神経毒や環境ホルモン作用を引き起こしてしまうことがあります。

フェノールを代謝するこのPST酵素は遺伝的変異を受けやすく、不耐症の人は意外と多くいます。たとえば、自閉症児の80~90%にPST酵素の問題があり、硫酸塩が少なくなり、フェノール不耐症であることが多いです。

また、遺伝的変異だけが理由だけでなく、クロストリジウム属による代謝産物がこの酵素を阻害したり、水銀やクロムなどの重金属は腎臓に保持している硫酸塩をブロックしたり、カンジダ菌感染によって硫酸塩を奪われたり、PSTはビリルビンの分解の方に浪費されていたり、ビタミンB6がPSTを阻害してしまったり、とさまざまです。

フェノール不耐症の場合、まずはフェノール除去食にする必要がありますが、フェノール類はあらゆる食品に含まれているため、食事から完全に排除することは不可能です。たとえば、ビタミンC、K、E、B1、B2、ナイアシン、B6、葉酸などこれらでさえもフェノール類です。

そのため、フェノール不耐症の人は、まずはフェノールが高密度に含まれた食品から避けていきます。(不思議なことに、フェノール不耐症の人はフェノール類、サリチル酸、フェノール性添加物を多く欲しがる。グルテン不耐の人がグルテン食品を欲しがるように。)

フェノールの一種、サリチル酸塩を除去する低サリチル酸塩食やフェインゴールド・ダイエットというのも欧米にはあります。サリチル酸は非ステロイド性抗炎症薬のアスピリンと構造が類似しており、鎮痛や解熱作用などがありますが、これが排泄されずに蓄積されてしまうと、アセチルコリンやノルエピネフリン、ドーパミンなどの神経伝達物質の産生を妨げ、中枢神経系を刺激するることがあります。

サリチル酸に対する不耐症は、低PSTや硫酸化の問題だけでなく、グルタチオンという抗酸化酵素の欠乏に密接に関係しています。酸化ストレスが多く、グルタチオンレベルが低いと、サリチル酸感受性のリスクが高くなるのです。また、消化器系に細菌の異常繁殖や消化吸収の問題を抱えていると、いわゆるリーキーガット(腸漏れ)を起こし、これによってサリチル酸不耐を発症することもあります。

MSGや味の素などと呼ばれるグルタミン酸ナトリウムもケミカルフェノール性のグルタミン酸塩です。過剰なグルタミン酸塩が脳に届くと、神経毒となりえます。

アミンもフェノールであり、ヒスタミンはよく知られたアミンの一種です。サラミ、ベーコン、ヨーグルト、チョコレート、バナナなども高ヒスタミン商品です。

不耐となるのは、フェノール類やサリチル酸の硫酸化が上手くいっていないのだから、硫酸塩を含んだ食品や栄養素、硫黄含有食品を摂取していけば、感受性も軽減できるはずだとする医者もいます。

しかし、硫酸イオンは経口や腸からの吸収が困難のため、入浴によってエプソムソルト(硫酸マグネシウム)を経皮吸収させることによって、硫酸化を促進させようとする試みもあります。実際に報告では、多くの自閉症児に効果があったとする恩恵があったものの、一部ではかえって悪化するケースもありました。硫黄の多いシステイン補給や硫黄含有食品(ニンニク、卵、ブロッコリーなど)においても、同様に成功した例と悪化したと言う例が混在しています。この混在は、硫黄転移経路で必要なCBSという酵素に遺伝子変異があると正常な代謝が進まずに悪化するということも考えられます。

※ちなみに、慢性関節リウマチなどは硫酸塩欠乏が指摘されていることから、温泉療法によって硫酸塩を経皮吸収させ、回復させるのはこうした理由です。

そもそも、フェノール不耐となってしまう理由の一つ、硫酸塩の欠乏はミトコンドリアの機能不全も関係しています。腎臓における硫酸塩の再吸収はATPというエネルギーを利用するため、ミトコンドリアの機能が働いていないとATPが十分に合成されないからです。

また、硫酸化経路は遺伝子の発現に関わるメチレーション回路の下流にあるため、正常なメチレーションをサポートしていくことが鍵となるでしょう。

硫酸塩が欠乏していると、腸内のムチン・タンパク質が硫酸化されなくなるため、バリア機能が低下し、腸漏れを引き起こすため、フェノール不耐症を悪化させます。

最近、話を聞くとどうもフェノール不耐症(感受性)が疑われる人が増えています。あなたのその症状もしかするとフェノール不耐症かもしれません。

以上、参考にしてみてください。

生命がマグネシウムを利用するようになったワケ

吉冨 信長 2017年9月12日 · 生命が活動する上で最も重要なミネラルはマグネシウムであり、そして見方によっては鉄でもあります。原始生命は鉄を利用した代謝がほとんどでしたが、真核生物や多細胞生物が誕生する頃にはマグネシウムをメインの代謝ミネラルに変えていきます。 今日は、な...