吉冨 信長
2017年9月12日 ·
生命が活動する上で最も重要なミネラルはマグネシウムであり、そして見方によっては鉄でもあります。原始生命は鉄を利用した代謝がほとんどでしたが、真核生物や多細胞生物が誕生する頃にはマグネシウムをメインの代謝ミネラルに変えていきます。
今日は、なぜ生命はマグネシウムを利用するようになったのかをみていきます。
生命が誕生した約38億年前の海には、鉄(Fe)イオンが豊富でした。生命は鉄の酸化還元電位を利用することにより、あらゆる生理機構を得ることができました。例えば、鉄の酸化還元性を利用したタンパク質である鉄硫黄クラスターは最も起源の古いタンパク質であり、エネルギー発電の場である電子伝達系において今もなお使用されています。
ご存じのように鉄は遊離してしまうと活性酸素を発生しやすいという大きな短所もあるため、私たちの生体内での生理機構において非常に厳戒態勢で扱われます。しかし、生命が誕生した当時の地球の環境は酸素(O2)がほとんでありませんでした。そのため、当時の生命にとって、鉄の危険性はさほどありません。
ところが、地球史上、最大の事件が起きます。それは光合成細菌の一種であるシアノバクテリアが誕生したことで、光合成で生まれた副産物の酸素が海水中に蔓延したことです。当時の生命は嫌気性(=酸素嫌い)だったため、酸素は毒物でしかありません。海中の鉄は現在の数千倍もの濃度があり(今では考えられないが当時の海中ミネラルはFe、Ca、Mg、Na、K、Mn、Znの順で存在していた。そのぐらい鉄に困ることはなかった)、これによって何とか酸素を鉄と反応させ、酸化鉄として解毒していたのです。
しかし、その後シアノバクテリアの異常繁殖に伴い、いよいよ海水中の鉄も尽きてきました。酸化鉄は鉄鉱床として海底に沈殿するからです。鉄が減少したため海中で酸素が増え、いよいよ大気中に猛毒の酸素があふれ出すようになります。
地球における酸素上昇により、好気性(=酸素利用できる)の生命があらわれるようになりました。中でも有名なのは、αプロテオバクテリアという光合成細菌から派生した細菌ですね。これはのちのミトコンドリアです。
そして、嫌気性の古細菌がこの好気性のαプロテオバクテリア(つまりミトコンドリア)を取り込み、酸素利用したエネルギー代謝を獲得します。つまり、真核生物の誕生です。しかし、当時の海水中には利用するのに鉄が少なくなっていたこと、酸素が増えたため鉄利用に危険性が出てきたことなどの理由で、使っていた鉄の一部を他ミネラルに代用する必要性が出てきたのです。
そこで、生命は海水中に豊富に存在していたマグネシウム(Mg2+)イオンを利用するようになります。生命が誕生する前には海水中にはDNAやタンパク質が存在し始めていましたが、実はこれらよりも前にRNAが存在していたとされています。
アトランタのジョージア工科大学の研究者らは、酸素がほとんどなかった初期の地球環境下においては、RNAはもともと鉄の存在下で進化し、鉄によって作動するように最適化されているということを発表しています(2012年)。実際に、その環境下を再現して実験したところ、今ではマグネシウム利用によって作動するRNAに、鉄を利用するとマグネシウムの代わりになったことがわかり、さらにこれらの反応はマグネシウムより鉄の方が優れていたことがわかりました。
これは、以前鉄の利用によって作動していたRNA(や酵素)の多くが地球環境の変化に伴い、マグネシウムに置き換わったことを示唆しています。もちろん、ご存じのように、全てが置き換わったわけではありません。鉄の酸化還元電位を利用した反応はミトコンドリアをはじめ、今でも多くの生理機構の中に残されています。海水中から枯渇した鉄を求めて、生命はこの後、いよいよ食物連鎖の道を歩み、それによって鉄を得る方法を得ました。
生命がマグネシウムを代謝の基本ミネラルにしたのは以上のような理由があるからです。マグネシウム(Mg2+)は、ATPと複合体を形成し、ヌクレオチドや酵素との複合体を形成する、最も重要な代謝ミネラルです。鉄が枯渇したことによって生命が絶滅を回避した唯一の方法が、マグネシウムという代用のミネラルを獲得したことだったのです。
吉冨信長さんの投稿ログ
吉冨信長さんのfacebook投稿がいつも素晴らしすぎるので、残しておきたくてつくったブログです。
2018年9月11日火曜日
歯ぎしりとパントテン酸(B5)
もし、眠っている間に歯ぎしりが多いと指摘されたら、パントテン酸(ビタミンB5)を試してみるといいかもしれません。
50年以上にわたって栄養療法と自然療法を研究してきた、アメリカのアラバマ大学のCheraskin博士とRingsdorf博士は、歯ぎしりする人にパントテン酸とカルシウムを摂取させると改善するという報告をしています(Dent Surv. 1970 Dec;46(12):38-40)。
歯ぎしりに悩まされる患者らにビタミンA、C、E、ヨウ素を摂取させたグループでは改善が見られなかったが、ビタミンA、C、E、ヨウ素、カルシウム、パントテン酸(ビタミンB5)を摂取したグループは、約1年後には歯ぎしりが 消失したという結果になったと報告しています。彼らはパントテン酸とカルシウムの投与が功を奏したと結論付けています。
パントテン酸は抗ストレスビタミンといわれるように、ストレスに対抗する副腎や脳の重要な栄養素です。ストレスはパントテン酸を消耗させ、パントテン酸の欠乏はストレスをさらに誘発させます。
アメリカのアイオワ州立の刑務所で、パントテン酸除去食を与えられたグループに、尿中の副腎ホルモン値が低下していき、疲労や争いが多くなり、呼吸器感染も増えたことが報告されています(Proceeding of the Society of Biology 86,693-698,1954)。パントテン酸が食事に戻されたときは、これらの症状が全て改善されたそうです。
そもそも、歯ぎしりはさまざまな原因があります。中でも夜間低血糖やストレスなどが大きく関係しています。外因的要因で副腎が弱ると、低血糖やアレルギーが発生します。
一般にこうした治療に使われるパントテン酸の推奨量は250~500mgという大量投与が必要だとされています。ただし、歯ぎしりの追試はあまり多く行われていないのが現状であり、これがどこまで現場で功を奏すのかは不明です。
以上より、歯ぎしりの対策にパントテン酸を意識してみるのもいいかもしれません。
※治療は独断でせずに、必ず医療機関の指導のもと行ってください。
50年以上にわたって栄養療法と自然療法を研究してきた、アメリカのアラバマ大学のCheraskin博士とRingsdorf博士は、歯ぎしりする人にパントテン酸とカルシウムを摂取させると改善するという報告をしています(Dent Surv. 1970 Dec;46(12):38-40)。
歯ぎしりに悩まされる患者らにビタミンA、C、E、ヨウ素を摂取させたグループでは改善が見られなかったが、ビタミンA、C、E、ヨウ素、カルシウム、パントテン酸(ビタミンB5)を摂取したグループは、約1年後には歯ぎしりが 消失したという結果になったと報告しています。彼らはパントテン酸とカルシウムの投与が功を奏したと結論付けています。
パントテン酸は抗ストレスビタミンといわれるように、ストレスに対抗する副腎や脳の重要な栄養素です。ストレスはパントテン酸を消耗させ、パントテン酸の欠乏はストレスをさらに誘発させます。
アメリカのアイオワ州立の刑務所で、パントテン酸除去食を与えられたグループに、尿中の副腎ホルモン値が低下していき、疲労や争いが多くなり、呼吸器感染も増えたことが報告されています(Proceeding of the Society of Biology 86,693-698,1954)。パントテン酸が食事に戻されたときは、これらの症状が全て改善されたそうです。
そもそも、歯ぎしりはさまざまな原因があります。中でも夜間低血糖やストレスなどが大きく関係しています。外因的要因で副腎が弱ると、低血糖やアレルギーが発生します。
一般にこうした治療に使われるパントテン酸の推奨量は250~500mgという大量投与が必要だとされています。ただし、歯ぎしりの追試はあまり多く行われていないのが現状であり、これがどこまで現場で功を奏すのかは不明です。
以上より、歯ぎしりの対策にパントテン酸を意識してみるのもいいかもしれません。
※治療は独断でせずに、必ず医療機関の指導のもと行ってください。
2018年9月7日金曜日
皮膚の刺激と自律神経
吉冨 信長
2017年8月10日 ·
「ふれあい」とは心と心を通わせることを言いますが、もとは「触れ合う」から来ています。お互いの肌を触れ合ったり、タッチしあったりすることが、心の通い合いへ繋がっていくのです。
肌・皮膚の刺激はそのまま脳に直結しています。日本人が少ないとされるスキンシップは、特に現代社会では必要とされる行動です。
皮膚に触れることで、愛情ホルモンまたは絆ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌されます。オキシトシンはそもそも分娩や母乳分泌を導く女性特有のホルモンとして捉えられていましたが、現在では老若男女、誰にでも分泌されるものということがわかっています。
そして、このオキシトシンは自律神経を整う上でとても重要な役割を果たしています。
自律神経には、活動をしているときやストレスを感じているときに働く交感神経と、リラックスしている・体の回復をしているときに働く副交感神経に分かれます。現代人はストレス過多や睡眠不足によって交感神経が過剰になりやすく、自律神経のバランスを崩しやすい傾向にあります。
交感神経優位のときには、体はアドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンの濃度が血液中に高まってきます。これらが一時的であればさほど問題にはならないのですが、長期で過剰に持続してしまうと、キレる、イライラする、落ち着かない、高血糖になるという症状があらわれます。
さらにアドレナリンやコルチゾールは血糖値を上昇させるだけでなく、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きまで悪くします。
実は、皮膚刺激などによりオキシトシンが分泌されれば、アドレナリンやノルアドレナリンそしてコルチゾールの分泌を抑制することがわかっています。つまり、オキシトシンは交感神経の働きを抑え、副交感神経の働きを高めてくるのです。
また、オキシトシンは、ノルアドレナリンの分泌をコントロールするセロトニン(通称・幸せホルモン)の働きを促進します。セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの材料にもなるため、オキシトシンは良い睡眠をとるのにも必要なホルモンといえるでしょう。
最近の研究では、オキシトシンが胃腸の不調を改善することが示されています。オキシトシンがストレスなどによって損傷した胃や腸内の上皮細胞内でプロスタグランジンE2という生理活性物質の放出を増加させ、腸の損傷の修復を促進し、傷害から保護することがわかっています。実際に、米国をはじめ放射線療法によって損傷した腸の治療や過敏性腸疾患(IBD)にオキシトシンを投与して改善しています。
皮膚刺激は私たちの生体に様々な利点を持ちますが、中でもオキシトシンという脳内最強のホルモンを分泌させ、自律神経の正常化をはじめ、多くの効果をもたらすのです。
2017年8月10日 ·
「ふれあい」とは心と心を通わせることを言いますが、もとは「触れ合う」から来ています。お互いの肌を触れ合ったり、タッチしあったりすることが、心の通い合いへ繋がっていくのです。
肌・皮膚の刺激はそのまま脳に直結しています。日本人が少ないとされるスキンシップは、特に現代社会では必要とされる行動です。
皮膚に触れることで、愛情ホルモンまたは絆ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌されます。オキシトシンはそもそも分娩や母乳分泌を導く女性特有のホルモンとして捉えられていましたが、現在では老若男女、誰にでも分泌されるものということがわかっています。
そして、このオキシトシンは自律神経を整う上でとても重要な役割を果たしています。
自律神経には、活動をしているときやストレスを感じているときに働く交感神経と、リラックスしている・体の回復をしているときに働く副交感神経に分かれます。現代人はストレス過多や睡眠不足によって交感神経が過剰になりやすく、自律神経のバランスを崩しやすい傾向にあります。
交感神経優位のときには、体はアドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンの濃度が血液中に高まってきます。これらが一時的であればさほど問題にはならないのですが、長期で過剰に持続してしまうと、キレる、イライラする、落ち着かない、高血糖になるという症状があらわれます。
さらにアドレナリンやコルチゾールは血糖値を上昇させるだけでなく、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きまで悪くします。
実は、皮膚刺激などによりオキシトシンが分泌されれば、アドレナリンやノルアドレナリンそしてコルチゾールの分泌を抑制することがわかっています。つまり、オキシトシンは交感神経の働きを抑え、副交感神経の働きを高めてくるのです。
また、オキシトシンは、ノルアドレナリンの分泌をコントロールするセロトニン(通称・幸せホルモン)の働きを促進します。セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの材料にもなるため、オキシトシンは良い睡眠をとるのにも必要なホルモンといえるでしょう。
最近の研究では、オキシトシンが胃腸の不調を改善することが示されています。オキシトシンがストレスなどによって損傷した胃や腸内の上皮細胞内でプロスタグランジンE2という生理活性物質の放出を増加させ、腸の損傷の修復を促進し、傷害から保護することがわかっています。実際に、米国をはじめ放射線療法によって損傷した腸の治療や過敏性腸疾患(IBD)にオキシトシンを投与して改善しています。
皮膚刺激は私たちの生体に様々な利点を持ちますが、中でもオキシトシンという脳内最強のホルモンを分泌させ、自律神経の正常化をはじめ、多くの効果をもたらすのです。
体はマグネシウムをいつも欲しています
吉冨 信長
2016年8月10日 ·
地球が誕生してから、始めて生命が生まれたのは海の中です。海の中で誕生した生命は、海水に溶け込んでいるマグネシウムを利用することで、体の代謝を維持する仕組みを構築してきました。
実はマグネシウムは海の中ではカルシウム以上に多い元素です。海の中にいた生命は、細胞の内外のバランスを上手に保つのにマグネシウムが必要でした。この生命は進化とともにやがて陸に上がりますが、このマグネシウムを利用して陸上でエネルギー産生を行うようになりました。つまり、数十億年以上前に海生まれの私たちの祖先が、陸でうまく生活するためには、海の中で使用していたマグネシウムがそのまま陸上でも必要だったのです。
陸上での生活を選んだ私たち哺乳類は、海藻や魚貝類のほか、植物の種実からもマグネシウムをとるようになります。
長寿研究や先住民族の健康調査において、「よく海産物を食べるところほど長寿であり健康である」というデータが多いのもご存じでしょう。実際に、マグネシウムが多く含まれる食品は、ダントツ海藻類であり、次に小魚・貝類です。また、白米ではなく雑穀類を摂取する地域、大豆食品(できれば発酵もの)を多く摂取する地域に長寿が多いのも、やはりマグネシウムが多く含まれるからかもしれません。
しかし、現代はどうでしょう。たとえば白米のように穀物は精製されマグネシウム含有量は落ち、海藻類や魚貝類を食べない人が多くなりました。ミネラルを含んだ自然塩は稀となり、多くが精製塩です。さらに、精製糖質の過剰摂取にるマグネシウム欠乏、重金属曝露によるマグネシウム吸収効率の低下、土壌疲弊による野菜のマグネシウム含有量低下など、マグネシウム不足は深刻化しています。
マグネシウム不足は多くの慢性疾患の原因となります。にもかかわらず、(医者でさえ)それがマグネシウム不足とはわからず、医薬品で対処療法をする始末となり、根治に至らず、悪循環が生まれます。
私たちの体はマグネシウムを常に欲しています。生命の素であるマグネシウムを上手に摂取していきたいものです。
2016年8月10日 ·
地球が誕生してから、始めて生命が生まれたのは海の中です。海の中で誕生した生命は、海水に溶け込んでいるマグネシウムを利用することで、体の代謝を維持する仕組みを構築してきました。
実はマグネシウムは海の中ではカルシウム以上に多い元素です。海の中にいた生命は、細胞の内外のバランスを上手に保つのにマグネシウムが必要でした。この生命は進化とともにやがて陸に上がりますが、このマグネシウムを利用して陸上でエネルギー産生を行うようになりました。つまり、数十億年以上前に海生まれの私たちの祖先が、陸でうまく生活するためには、海の中で使用していたマグネシウムがそのまま陸上でも必要だったのです。
陸上での生活を選んだ私たち哺乳類は、海藻や魚貝類のほか、植物の種実からもマグネシウムをとるようになります。
長寿研究や先住民族の健康調査において、「よく海産物を食べるところほど長寿であり健康である」というデータが多いのもご存じでしょう。実際に、マグネシウムが多く含まれる食品は、ダントツ海藻類であり、次に小魚・貝類です。また、白米ではなく雑穀類を摂取する地域、大豆食品(できれば発酵もの)を多く摂取する地域に長寿が多いのも、やはりマグネシウムが多く含まれるからかもしれません。
しかし、現代はどうでしょう。たとえば白米のように穀物は精製されマグネシウム含有量は落ち、海藻類や魚貝類を食べない人が多くなりました。ミネラルを含んだ自然塩は稀となり、多くが精製塩です。さらに、精製糖質の過剰摂取にるマグネシウム欠乏、重金属曝露によるマグネシウム吸収効率の低下、土壌疲弊による野菜のマグネシウム含有量低下など、マグネシウム不足は深刻化しています。
マグネシウム不足は多くの慢性疾患の原因となります。にもかかわらず、(医者でさえ)それがマグネシウム不足とはわからず、医薬品で対処療法をする始末となり、根治に至らず、悪循環が生まれます。
私たちの体はマグネシウムを常に欲しています。生命の素であるマグネシウムを上手に摂取していきたいものです。
ビタミンB6によるマグネシウム吸収
吉冨 信長
8月17日 9:29 ·
マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラルは体内の必須栄養素であるものの、これらは金属であるからこそ、その吸収は容易ではありません。
マグネシウムを意識して日々摂取しているのに、その効果を感じられない、と思う人も中にはいるかもしれません。マグネシウムの吸収はいくつかの要因に左右されているため、マグネシウム・リッチな食品やサプリメント補給をしているにもかかわらず、マグネシウムが不足していることもあります。その原因の一つに、実はビタミンB6不足があります。
ピリドキシンとも呼ばれているビタミンB6は、細胞にマグネシウムを輸送したり、またマグネシウムの蓄積を増やすことのできるビタミンです(Magnes Res. 1990 Jun;3(2):79-85)。これは、ビタミンB6の活性型であるピリドキサールリン酸(PLP)がマグネシウムと錯体(≒化合物)をつくることによってマグネシウム吸収量が2~3倍になると言われています。
女性に多い月経前症候群(PMS)はいくつかの臨床によって、その根本原因にマグネシウム欠乏が挙げられています。実際に、PMSの女性では、赤血球や白血球におけるマグネシウムのレベルがPMSの無い女性よりも低いこともわかっています(Obstetrics, Gynaecology and Reproductive Medicine. 2008;18(2):29-52)。
PMSにおけるある臨床研究では、B6100mg /日を1ヶ月間投与すると、血清マグネシウム濃度が高かくなったことが分かっています。他の研究においても、B6を投与するだけで、細胞中のマグネシウムレベルが著しく増加することがわかっています(Magnesium. 1986;5(1):27-32)。
そこで、イギリスのレディング大学の研究では、B6がマグネシウム吸収率をアップさせることに着目し、平均年齢32歳の女性44人を対象に、マグネシウムのみを投与したグループ、B6のみを投与したグループ、マグネシウムとB6を併用したグループ、そしてプラセボ薬を投与したグループに分け二重盲試験を行ったところ、マグネシウムとB6を併用したグループに有意な改善が見られたことを発表しています(J Womens Health Gend Based Med. 2000 Mar;9(2):131-9)。
また、イランのイスファハン医科大学の研究においても、PMSの患者(平均年齢30歳前後)を無作為に3つのグループに分け、マグネシウムのみの投与グループ、マグネシウムとB6の投与グループ、そしてプラセボ薬の投与グループ、それぞれ50人ずつにして二重盲試験を実施したところ、マグネシウムとビタミンB6の組み合わせが、マグネシウム単独投与よりも、PMS症状の軽減に役立ったことを報告しています(Iran J Nurs Midwifery Res. 2010 Dec; 15(Suppl1): 401-405)。
アメリカ精神医学協会(American Psychiatry Association)でも、マグネシウムとB6の併用がPMS症状を低下させる可能性があることを公言しています。また、B6の活性型であるPLPの血清濃度が上がるほど、がん、糖尿病、心血管疾患などの慢性疾患から軽減されることもわかっており、予防因子の一つといえます。つまり、適切なPLP濃度を維持することは、長寿に結び付くわけです。
ただし、注意しなければならないのはB6は水溶性ビタミンの中でも最も副作用のあるものです。B6のメガドースは、あらゆるアミノ酸代謝を促進するものの、一方で興奮性の神経毒を高めてしまうことがあるため、大量摂取はあまりお勧めできるものではありません。
以上により、マグネシウム吸収を促進するのにビタミンB6の補給は有効です。
サマータイム導入による健康リスク
吉冨 信長
8月21日 21:24 ·
東京オリンピックの暑さ対策として、委員会がサマータイム制(英語表記: Daylight Saving Time。以下DST)を提言し、政府が検討を指示していますが、実は海外ではさまざまな健康リスクが報告されています。夏季に時計を1時間進めることは、睡眠不足を引き起こし、さらに心血管や精神面に障害をきたす可能性があります。
アメリカ神経学会の2016年の報告では、フィンランドにおいてサマータイム(DST)導入開始から2日後に脳卒中発生率が約8%高まったことが発表されています(AAN’s 68th Annual Meeting,April 15 to 21, 2016)。ちなみに、がん患者では脳卒中の発症率が約25%も高くなり、さらに65歳以上の人では発症率は約20%高くなりました。
アメリカのコロラド大学の報告でも心臓発作が21%も増加しています(Open Heart,30 Mar 2014;1,e000019,1-5)。アラバマ大学バーミンガム校の2012年の研究では、DSTによって心臓発作のリスクが10%増加することが報告されています。
これらの機序や明確な原因はあまりわかっていませんが、時間がずれることで睡眠障害、概日リズムの急な変化、異常な免疫反応がこれらの要因として考えられています。
スウェーデンの研究でも、DSTに切り替えてからの平日3日間にやはり心臓発作リスクが増加することを報告しています(N Engl J Med 2008; 359:1966-1968)。他にも、カナダでは交通事故が増えたこと(N Engl J Med 1996; 334:924-925)、アメリカ・ミシガン州では職場でのケガが増えたこと(Journal of Applied Psychology, 94(5), 1305-1317)、ボストン医科センターでは体外受精での流産が増えたこと(Chronobiol Int. 2017;34(5):571-577)なども報告されています。
DSTによるうつの増加についても各国が発表しています。デンマークの研究では、DST導入後にうつ発症が11%増加したことを報告しています(Epidemiology, May 2017,Vol.28,Issue3,346-353)。オーストラリアの研究では、DST開始後に男性の自殺率が上昇することがわかっています(Sleep and Biological Rhythms,Jan 2008, Vol6, Issue1,22–25)。ペンシルベニア州立大学で行われた2012年の研究では、DST開始後、労働者の生産性が低下したことを発表しています(Journal of Applied Psychology 2012, Vol.97, No.5, 1068-1076)。
さて、今回のサマータイム制度導入の際、日本では早めに終業することによって電力消費のピークをシフトできるとして検討されていますが、実際に独立行政法人・産業技術総合研究所によるシミュレーションでは、14時台の電力が抑えられても、帰宅によって16時台で家庭電力が増加するため、結局は需要は伸びる可能性があるそうです。
アメリカ・インディアナ州でもDST後は住宅電力の需要を約4%増加させたことを発表しています(http://www.nber.org/papers/w14429.pdf)。オーストラリアでもDSTは決して電力エネルギー量を低下させていません(Journal of Environmental Economics and Management,Vol.56, Issue3, Nov 2008,207-220)。
海外の良い部分はマネせずに、悪い部分ばかり追随していく日本。このサマータイム制導入に限らず、私は日本の行く末にとても懸念しています。
8月21日 21:24 ·
東京オリンピックの暑さ対策として、委員会がサマータイム制(英語表記: Daylight Saving Time。以下DST)を提言し、政府が検討を指示していますが、実は海外ではさまざまな健康リスクが報告されています。夏季に時計を1時間進めることは、睡眠不足を引き起こし、さらに心血管や精神面に障害をきたす可能性があります。
アメリカ神経学会の2016年の報告では、フィンランドにおいてサマータイム(DST)導入開始から2日後に脳卒中発生率が約8%高まったことが発表されています(AAN’s 68th Annual Meeting,April 15 to 21, 2016)。ちなみに、がん患者では脳卒中の発症率が約25%も高くなり、さらに65歳以上の人では発症率は約20%高くなりました。
アメリカのコロラド大学の報告でも心臓発作が21%も増加しています(Open Heart,30 Mar 2014;1,e000019,1-5)。アラバマ大学バーミンガム校の2012年の研究では、DSTによって心臓発作のリスクが10%増加することが報告されています。
これらの機序や明確な原因はあまりわかっていませんが、時間がずれることで睡眠障害、概日リズムの急な変化、異常な免疫反応がこれらの要因として考えられています。
スウェーデンの研究でも、DSTに切り替えてからの平日3日間にやはり心臓発作リスクが増加することを報告しています(N Engl J Med 2008; 359:1966-1968)。他にも、カナダでは交通事故が増えたこと(N Engl J Med 1996; 334:924-925)、アメリカ・ミシガン州では職場でのケガが増えたこと(Journal of Applied Psychology, 94(5), 1305-1317)、ボストン医科センターでは体外受精での流産が増えたこと(Chronobiol Int. 2017;34(5):571-577)なども報告されています。
DSTによるうつの増加についても各国が発表しています。デンマークの研究では、DST導入後にうつ発症が11%増加したことを報告しています(Epidemiology, May 2017,Vol.28,Issue3,346-353)。オーストラリアの研究では、DST開始後に男性の自殺率が上昇することがわかっています(Sleep and Biological Rhythms,Jan 2008, Vol6, Issue1,22–25)。ペンシルベニア州立大学で行われた2012年の研究では、DST開始後、労働者の生産性が低下したことを発表しています(Journal of Applied Psychology 2012, Vol.97, No.5, 1068-1076)。
さて、今回のサマータイム制度導入の際、日本では早めに終業することによって電力消費のピークをシフトできるとして検討されていますが、実際に独立行政法人・産業技術総合研究所によるシミュレーションでは、14時台の電力が抑えられても、帰宅によって16時台で家庭電力が増加するため、結局は需要は伸びる可能性があるそうです。
アメリカ・インディアナ州でもDST後は住宅電力の需要を約4%増加させたことを発表しています(http://www.nber.org/papers/w14429.pdf)。オーストラリアでもDSTは決して電力エネルギー量を低下させていません(Journal of Environmental Economics and Management,Vol.56, Issue3, Nov 2008,207-220)。
海外の良い部分はマネせずに、悪い部分ばかり追随していく日本。このサマータイム制導入に限らず、私は日本の行く末にとても懸念しています。
銅・亜鉛バランス
吉冨 信長
8月23日 21:54 ·
血清での銅/亜鉛 比は1前後が理想です。もし、銅/亜鉛 比が1より大きいと、銅(Cu)が過剰で亜鉛(Zn)が不足しているという栄養状態の可能性があり、または体内で「炎症」が起きている可能性があります。
臓器や各組織で炎症が起きていると銅(Cu)の血清濃度が上昇し、同時に亜鉛(Zn)濃度は低下します(J. Nutr.,109,1979,1432-1437)。
特に高齢者ではCu/Zn比が2を超える人が多く、これは単に亜鉛不足であるか、または炎症が起きている可能性が高くなります(Biogerontology, 11 ,2010, 309-319)。
他にもCu/Zn比が高いと、心血管疾患による死亡リスクの上昇(Epidemiology, 17,2006, 308-314 ; Eur. J. Clin. Nutr., 50,1996, 431-437)、悪性腫瘍の指標(Biol. Trace Elem. Res., 94,2003,113-122 ; Cancer, 63,Feb,4,1989,726-730)。そして高齢者の全死亡率の上昇(Biogerontology, 11 ,2010,309-319)に大きく相関しています。
体内に酸化ストレスが持続していると、血液中に流れているアルブミンというタンパク質から亜鉛イオンが離れ、組織や細胞に送り込まれます。アルブミンから遊離した亜鉛イオンは、酸化ストレスが続いている組織で、メタロチオネインという強力な抗酸化タンパク質の合成を誘導するのです。こうして、血液中には亜鉛が減少していくわけです。(しかし、このときアルブミンレベルは減少せずに亜鉛のみが減少する。)
一方、銅については、酸化ストレス下では、肝臓でセルロプラスミンという銅輸送タンパク質が合成され、血液に送られます。このため、血液中には銅の濃度が上昇していくという仕組みです。血清のセルロプラスミンは抗酸化剤とし働いています。
また、慢性炎症がおきていると、組織からTNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインが上昇し、このときアルブミンの合成が抑制され(すなわち亜鉛が低下)、セルロプラスミンの合成が促進されます(すなわち銅が上昇する)。(J. Nutr., 118,1988,375-381 ; J. Immunol., 159,1997,1938-1944)
最近では、銅/亜鉛バランス比をこのような栄養パラメーターや炎症状態の指標としてだけではなく、「ホルモン」状態を表すものとして考えられてもいます。
中でも「インスリン」です。血清アルブミンの合成スピードはインスリンに依存しています。アルブミンは亜鉛を保持する役割もあることを考えると、インスリン作用の弱い糖尿病患者では血清の亜鉛濃度が低いことも納得できます(PLoS One, 8,2013, e61776)。事実、糖尿病患者はCu/Zn比が高いです。そのため、Cu/Zn比が高いということは、インスリンの効きが悪いインスリン抵抗性や、インスリン分泌不全の可能性も考えられるのです。
※また、インスリンはセルロプラスミン(=銅タンパク)の合成も抑制させるため、インスリンに何かしらの障害があると血液中のCu/Zn比を上昇させます。
他にも、ACTH、チロキシン、エストロゲン、コルチゾールのようなホルモン物質も血清のセルロプラスミン(=銅タンパク)のレベルを上げます(Physiol. Rev., 65,1985,238-309)。実際に合成コルチゾールを投与すると 、銅レベルの上昇、亜鉛レベルの低下によってCu/Zn比が上昇することがわかっています(Am. J. Med. Sci., 282,1981,68-74)。Cu/Zn比が上昇すると、余剰の銅によってノルアドレナリン・レベルを上昇させ、不安、パニック障害、睡眠障害、被害妄想などを起こしてしまうかもしれません。
以上をまとめると、血液における銅/亜鉛比は生体の状態を示す重要なパラメーターであり、栄養状態、炎症の有無、ホルモンレベルなどが推測できます。
加齢にともない、Cu/Zn比は増加することが多数報告されていますが、これは老化による酸化ストレスを抑えようとしている抗酸化タンパクの状態を示すものでもあります。
そういう意味ではアンチエイジングとしてこのCu/Zn比を低下させることを目標に持つのも一つの指標となるでしょう。また、最近では、統合失調症、うつ病、自閉症などにもCu/Zn比の上昇がみられることがあり、この数値を改善すること(炎症の抑制、栄養の補給など)を治療の一つに加えられてもいます。
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