2018年9月7日金曜日
リチウムによる脳神経の健全化
吉冨 信長
9月1日 22:44 ·
リチウムの重要性を語ると、おそらく多くの人が否定的な反応をとることでしょう。なぜなら、双極性障害などに用いられる気分安定薬リーマス(炭酸リチウム)の副作用が問題視されているからです。
しかし、重要なことは、ミネラルなどの栄養素には「最適量」があり、その量をはるかに超えた場合は毒となり、逆に少なすぎる摂取量は欠乏症になることです。そして、このリチウムは少しの量が最適量ということです。リーマスで使用されるリチウムは100mg/日単位の量であり、私たちが本来必要とされる最適量は2~5mg/日程度の量です。
つまり、高リチウムであっても低リチウムであっても良い結果とならず、適正なリチウム量を維持させることが、脳神経作用の恒常性や精神面の健全化をはかる方法の一つとなるのです。(※毛髪メタル検査などで状態がわかります)
リチウムはおもに野菜、海藻類、マメ類、全粒穀物などの植物性食品(または魚貝類など)に多く含まれるミネラルですが、これらの含有量はその地域の地下水や土壌のミネラル組成に大きく異なります(J Am Coll Nutr. 2002 Feb;21(1):14-21)。そのため、その土地にリチウム濃度が低いと、犯罪率や自殺率が有意に高いことがわかっています(Biol Trace Elem Res. 1990 May;25(2):105-13)。
実はここ日本でも、リチウム濃度と自殺率の逆相関が証明された研究があります(Br J Psychiatry. 2009 May;194(5):464-5)。これは、大分県の18市町村(計1,206,174人)において水道水のリチウム濃度を調べたところ、リチウム濃度が低い市町村ほど自殺率が高くなることがわかったのです。さらに、この研究で寿命との関係を調べたところ、リチウム濃度が高くなるほど(あくまで最適量の範囲)、寿命が長くなることがわかり、アンチエイジングとしても必須であることが報告されています(Eur J Nutr. 2011 Aug;50(5):387-9)。
ロシアの研究では、リチウムが脳ミトコンドリアのエネルギー代謝を回復させることが実証されています(Zh Nevropatol Psikhiatr Im S S Korsakova. 1977;77(8):1179-86)。これは、リチウム投与によって脳内ミトコンドリアのエネルギー代謝や抗酸化力が向上し、躁うつ病症状や統合失調症にある攻撃性が減少したという報告です。また、イタリアの研究でも、リチウムはミトコンドリアの数を増やすことが報告されています(Autophagy. 2008 May;4(4):527-30. Epub 2008 Mar 17)。
リチウムは、(怒り・不安・恐怖のホルモンである)アドレナリンやノルアドレナリン刺激によって増加したcAMPという細胞内シグナル伝達のセカンドメッセンジャーを抑制します(川崎医学会誌 13(2), 128-132, 1987)。つまり、リチウムはアドレナリンの過剰分泌をブロックするのです。
リチウムは神経保護作用があります(Front Neurosci. 2014; 8: 457)。たとえば、脳内に過剰なグルタミン酸が存在するとこれらは興奮毒素となり、脳神経内のカルシウム濃度を向上させてしまい、神経細胞がアポトーシス(自殺死)してしまいますが、ここに最適量のリチウムがあれば神経細胞死を予防できます。
さらに、リチウムは神経細胞の樹状突起の長さを伸ばし、その数を増加させます。これによって高性能の神経伝達が可能となります。
また、特筆すべきは、リチウムは脳由来神経栄養因子とよばれるBDNFを増加させることです。BDNFは今ある神経細胞を正常に維持させ、新しい神経細胞やシナプスに分化することを促す重要なタンパク質です。(ちなみにビタミンではナイアシンがBDNFの発現を向上させます。)
リチウムはアルツハイマーやそれに関連した認知症を予防します(Neurodegener Dis. 2008;5(3-4):247-9)。リチウムは記憶障害の予防やβアミロイドの減少に功を奏しています(PLoS One. 2015 Nov 25;10(11):e0142267)。また、低用量リチウム投与がアルツハイマー病の認知障害の進行を遅らせます(Curr Alzheimer Res. 2013 Jan;10(1):104-7)。
リチウムは炎症性代謝産物をつくるアラキドン酸の代謝回転率を減少させることがわかっています(Neurosci Lett. 1996 Dec 20;220(3):171-4)。アメリカの国立衛生研究所の研究では、リチウムがアラキドン酸の代謝産物プロスタグランジンE2の脳内濃度を低下させたことが報告されています(Mol Psychiatry. 2002;7(8):845-50)。
最後に注意してい欲しいのは、カフェイン飲料の摂取です。カフェインはリチウムの働きを阻害する可能性があります(Biol Psychiatry. 1995 Mar 1;37(5):348-50)。
以上により、リチウムは脳内の必須ミネラルであり、神経細胞の保護や健全化、そして脳内ホルモンの恒常性や興奮抑制に大きな役割を果たしています。しかし、まだまだ医療現場では見逃されているミネラルでもあります。
リチウム源の栄養素としてはアスパラギン酸リチウムやオロチン酸リチウムが一般ですが、アスパラギン酸の過剰摂取は興奮毒に繋がる可能性があることから、オロチン酸リチウムを選択するのがいいでしょう。とはいえ、野菜、海藻類、豆類、全粒穀物からリチウムを摂取し、リチウムの重要性を見直していきましょう。
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