2018年9月7日金曜日

脳内ミネラル「リチウム」の重要性


吉冨 信長

8月29日 21:39 ·

誤解をおそれずに言うのなら、脳のミネラルで最も重要なのは実は「リチウム」かもしれません。リチウムはその必要量が超微量であることから、また過剰症ばかりが挙げられてしまうことから、もっとも誤解されている微量ミネラルの一つです。

リチウムは脳神経の遺伝子と栄養素を結びつける、非常に重要なミネラルです。しかし、からだ全体から見ると必要量が微量なため、つい軽視されてしまい、そのためか世界的にも欠乏しやすいミネラルでもあります。


さらに、栄養学の教科書や医療現場においてもリチウムの栄養指導をほとんど見ることはありません(リーマス処方は別として)。必要量が少ないだけに油断してしまい、結果欠乏してしまうことがあるのです。

脳におけるリチウムの役割として、不安、気分、怒りなどホルモンによって動かされる感情のコントロールに働いています。

実際に、アメリカ、ドイツ、オーストリアの成人の中には、毛髪のリチウム濃度が低い人が少なからずいることがわかっており、特に学習障害のある人や犯罪者では異常に低かったことが報告されています(Biol Trace Elem Res. 1992 Aug;34(2):161-76)。

アメリカのある研究では、テキサス州27郡のそれぞれの水道水に含まれるリチウム濃度と、犯罪率や自殺率などの関係を調査したところ、リチウム濃度の高い郡では強盗発生率や暴力による犯罪率そして自殺率が有意に低かったことがわかっています(Biol Trace Elem Res. 1990 May;25(2):105-13)。また、リチウム濃度が高いと、アヘンやコカインなど麻薬による逮捕の発生率も低下していたのです。

ギリシャにおいても、34の各県から149サンプルの水道水を検査したところ、リチウム濃度が高いところほど自殺率が低下する傾向があることが発表されています(Biol Trace Elem Res. 2013 Dec;156(1-3):376-9)。同研究チームは、水道水のリチウム濃度が高い県は殺人事件率が減少する傾向にあることも報告しています(Biol Trace Elem Res. 2015 Apr;164(2):165-8)。

リチウムによる脳への改善効果は今にはじまったことではありません。実は1800年代後半から、うつ病または躁うつ病を治療するためにリチウムが使われていました。しかし、当時の安易な投薬や投薬量の知識不足などによって、その実績は不安定だったようです。また、7Up(セブンアップ)というレモン風味の炭酸飲料をご存じでしょうか。実は販売が開始された1920年代から1950年代までは、気分昂揚作用のためにリチウムが含まれていました。

リチウムはこうした感情のコントロール、気分、怒りや攻撃の抑制などの作用だけでなく、ビタミンB12や葉酸を脳の細胞に輸送するのに必須である(Biol Trace Elem Res. 1992 Aug;34(2):161-76)ことがわかってから、最近では遺伝栄養療法や精神栄養学においてその重要性と摂取の推奨が少しずつリバイバルし始めています。

実際に、B12や葉酸の輸送は、リチウム欠乏によって阻害され、リチウム補給によって回復することがわかっています。ビタミンB12は葉酸とともにセロトニン、メラトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンの合成に関与しているBH4(テトラヒドロビオプテリン)に必要なビタミンです。

自閉症回復のプロトコールを確立しているアメリカのDr.Amy Yaskoは、すべての自閉症児にリチウム濃度を確認することを、提案しています。リチウムは毛髪メタル検査(HMT)によって確認できます。

リチウムは神経保護作用があり、報告では脳虚血状態において神経保護効果があったことや、過剰となったグルタミン酸による興奮毒性からの保護も示されています。また、最近では水銀に曝露した患者にもリチウム補給が大きなメリットをもたらすことがわかっています。

そもそも、水銀毒の症状には、興奮性、イライラ、うつ、不安、ストレスに対する感受性、感情の不安定などがありますが、興味深いことに、これらはリチウム欠乏の症状に似ています。

これはおそらく、水銀が興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸のレベルを脳内で上昇させるというところにあり、リチウムはグルタミン酸受容体に対する調節や抑制作用があるからです。

リチウムの安全かつ有益となる摂取量は1~5mgと言われています(最大でも10mg)。副作用が問題となっている炭酸リチウムであるリーマスなどは1錠100~200mg、最大例1200mg/日の大量処方であり、これとは区別する必要があります。

以上のように、リチウムは脳において非常に重要なミネラルです。実際に、あらゆる精神障害において、このリチウム欠乏との相関も指摘されています。栄養療法の第一歩としてリチウム補給を掲げる医療関係者も増えています。つまり、リチウムを知らずして栄養学を語れないのです。リチウムはそういう意味でも、脳における最も重要なミネラルです。

リチウムの働きは多岐にわたるため、ここでは書ききれませんが、今後も少しずつアップしていく予定です。

ちなみに、リチウムを多く含む食材は、マメ類、海藻類、小魚や煮干し、キノコ類、トマト、キュウリ、キャベツなどの野菜です。リチウムの重要性を見直しましょう。

※リチウムを勉強したい方は、リチウム栄養研究の第一人者であるDr. G.N. Schrauzerの論文を拾ってみてください。また、リチウムを重視した栄養療法を実践しているDr.Amy Yasko関連の著書もおすすめです。

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