2018年9月7日金曜日
噛むことは消化の第一歩
吉冨 信長
8月25日 10:22 ·
どんなに栄養密度の高い食材を選んでも、それがきちんと消化され、最終的に吸収されなければ、意味がありません。健全な消化と栄養の吸収は、食べ物をきちんと噛むという、いたって当たり前の行為から始まります。
食べ物をきちんと噛み砕くと、唾液が分泌され、さらにそれぞれの消化器官から消化酵素が放出され、最終的に食べ物を分解して体のエネルギーとして利用することができるのです。
しかし、食べ物が適切に消化されないと、消化不良、胸やけ、便秘、頭痛、食べているのに低エネルギーといった、あらゆる消化器系の症状に悩まされるのです。
フランスのある研究では、お肉を食べた後にそのタンパク質がきちんと消化・吸収されるには、個々の咀嚼(そしゃく)能力に大きく依存することを発表しています(Am J Clin Nutr. 2007 May;85(5):1286-92)。
この研究では、60〜75歳の高齢者ボランティア20名のうち、自然歯列を保持しているグループ10名と、完全な義歯のグループ10名に分け、安定同位体標識ロイシン(≒代謝の目印)を使用して、120gの牛肉を食べた後の、タンパク質の代謝率を比較しました。結果、食後のタンパク質合成は、義歯装着グループの方が自然歯列グループよりも有意に低いことがわかったのです。
つまり、タンパク質食品の消化・吸収率は、個々の咀嚼能力に大きく依存します。
アメリカ・シカゴにある食品技術研究所(IFT)の研究では、被験者らにナッツのアーモンドを10回咀嚼したグループ、25回のグループ、そして40回のグループに分けたところ、咀嚼回数が多いグループほどより大きなエネルギーを得ることができ、咀嚼回数が少ないほど失われたエネルギー量が多く、排泄も無駄に多いことがわかりました(Sciencedaily online,July 15, 2013)。
また、よく噛むことは甘いものへの依存・執着の低下や、過食の低下につながります。アメリカ実験生物学会連合(FASEB)の研究では、チューイング・ガム(ノンシュガー)を噛んでいると、ガムを噛んでいない時よりも過食がなく、特に甘いものへの依存が低下することを発表しています(ScienceDaily, 20 April 2009)。これは、よく噛むことで視床下部が刺激され、神経性ヒスタミンが生成し、ちょうどよく満腹中枢が活性化されるからです。
食事をすると腸の膨満感に悩まされるという声も多く聞くようになりました。確かに、IBS(過敏性腸症候群)やSIBO(小腸内細菌異常増殖症)、そして潰瘍性大腸炎と診断された人は、いわゆる低FODMAP食という発酵性の低い食材を選ぶことも大事です。しかし、そもそも咀嚼数が低下している現代では、咀嚼回数を上げることにより、こうした食後の膨満感や不快感を低減することは可能です。
よく噛まないで飲みこんでしまうと、結腸において腸内細菌を必要以上に増殖させてしまい、消化不良、膨満感、便秘につながることがよくあります。また、咀嚼によってきちんと適切な唾液量が分泌されれば、下腹部を弛緩させ、消化プロセスを正常に促進することができます。
最後に、食事中は水やお茶をたくさん飲むことはできるだけ避けた方がいいということも付け加えておきます。胃の中に水分が多すぎると、消化が遅くなることがあります。私が世界中で見てきた伝統社会(狩猟採集、遊牧、さつまいも農耕民、漁猟民など)では、食事中に水を飲むことはしていませんでした。彼らはよく噛んで十分な唾液を分泌させることによって嚥下(えんげ)するのです。しかし、私たちはよく噛まずにすぐに水を利用して飲みこもうとします。
よく噛むという行為は、消化過程において最も大切な第一歩となります。
卵は半熟が、消化がよい
吉冨 信長
8月27日 7:22 ·
食べ物の消化率をアップさせ、栄養素の吸収率を上げるには、「加熱」が必要です。
ベルギーのルーブン大学病院によると、生卵で食べた場合の消化率は51%だったのに対し、加熱調理された卵では91%であったことが報告されています(J Nutr. 1998 Oct;128(10):1716-22)。
熱を加えることによって卵のタンパク質の結合を物理的に弱くし、消化しやすい形を新たにつくるからです。これは、生卵をそのまま食べたとき胃酸によって胃の中でスクランブルエッグのような状態になるのを、あらかじめ加熱調理によって似た状態にしておくことで、消化力を上げるものです。
そもそも胃が生の卵白を消化するのにはとても長い時間がかかります。また、卵白の部分に入っているアビジンというタンパク質が卵黄に含まれているビオチンとの結合性が非常に高いため、これらが結合してしまうと消化酵素でさえもほとんど分解できず、ビオチンの生体利用を妨げます。実際に、卵白部がきちんと加熱されていればビオチンの吸収は阻害されません(Present Knowledge in Nutrition2012:359-374)。さらに、サルモネラのような病原菌が殻を通って卵白まで汚染することがあるため、できるだけ火を通して殺菌する必要があります。
一方、生の卵黄は、生の卵白ほどのデメリットはなく、消化も難しくありません。そうすると、卵黄は生に近い状態で、卵白は火が通ってゴム状になった状態が最適だといえます。事実、ある実験では、半熟卵であれば1~2時間で消化され、完全に固くなったゆで卵やオムレツになると3時間後に消化されました。この消化の負担を考えても、やはり半熟卵が良いと考えられます。
卵黄の成分は脂質が32%、タンパク質16%、無機成分2%、炭水化物1%、と脂質が非常に多いため、加熱によって酸化することを考慮すれば、むしろ卵黄は生に近い状態の方がいいでしょう。実際に卵黄を高温で調理すると、コレステロールが酸化してオキシステロールという成分が生成されます。血液中にこのオキシステロールが過剰になると、心臓疾患のリスクが上がるといわれています(Redox Biol. 2013 Jan 31;1:125-30)。
※ただし、酸化したコレステロールは、食品由来のものよりは、血液中で酸化されたコレステロールのものの方が有害です。実際に、卵の消費と心臓疾患にはさほど相関がありません。
また、卵を長時間・高温で調理してしまうと栄養価を下げます。長時間の高温調理ではビタミンAを約17~20%減少させ(Int J Food Sci Nutr. 2006 May-Jun;57(3-4):244-8)、抗酸化物質の量も減少させます(Food Chem. 2016 Mar 1;194:111-6)。
加熱でも低温調理で短時間であれば、より多くの栄養素を維持します。たとえば、卵を40分間加熱調理すると、ビタミンDの61%が失われていますが、短時間で調理すれば18%しか失われません(Food Chem. 2014 Apr 1;148:170-5)。
しかし、栄養面では、ニワトリの育て方やエサによって栄養価が異なるため、質の良いものを選ぶ必要があります(Poult Sci. 2011 Jul;90(7):1600-8)。
ただし、調理によって多少の栄養素を失っても、それでも卵はビタミンや抗酸化物質の宝庫であるといわれています(Nutrients. 2015 Jan 20;7(1):706-29)
以上をまとめると、消化率や栄養素保持率を考えると卵黄は生に近い状態がよく、卵白は加熱されて固まった状態がいいため、「半熟卵」がもっとも消化によいと考えられます。
メラトニンの抗酸化作用
吉冨 信長
2017年8月28日 ·
夜なかなか寝付けれない人や朝の目覚めが悪い人はメラトニン不足かもしれません。メラトニンは、脳の松果体から分泌され、睡眠の質を高めてくれるホルモンです。
「睡眠ホルモン」とよく呼ばれていますが、正確に言えばそうではありません。深部体温を適正に下げたり、血圧を下げたり、自律神経を副交感神経優位に保ってくれたりするため、夜眠るときに熟睡を促すホルモンではありますが、睡眠を直接誘発するものではありません。
さて、メラトニンの原料はセロトニンです。セロトニンはご存じのとおり精神を安定にするホルモンであり、セロトニンの原料はトリプトファンというアミノ酸(の一種)です。よって、メラトニンはトリプトファンからつくられます。この間の代謝では、ビタミンB6を中心にビタミンB1、ナイアシン、葉酸、ビタミンCが必要になり、ミネラルではマグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄などです。
ところが、こうした栄養面だけでなく、日中に太陽光をどれだけ浴びたかでメラトニンの生成量が影響します。栄養状態が良くても、太陽光を曝露せず、屋内でずっと過ごす人は、概してメラトニン生成量が少ないという結果になったそうです。(ちなみにメラトニンは夜間につくられます)
特に、早朝の日の出から朝8時台の太陽光が望ましいとされています。私がまわった世界各地の伝統社会では、確かに、狩猟採集民も牧畜民も農耕民族も早朝から数時間仕事をして、あとは夕方まで休憩するというパターンが多かったです。
メラトニンは非常に古いホルモンで、30億年以上前に進化した単細胞生物から藻類、そして植物、動物、ほぼすべての生命が保持しています。もともとは活性酸素を消去する抗酸化物質として活躍していました。というよりは、基本的な性質は抗酸化作用であり、進化の過程でホルモンの働きも担うようになったというのが最近の風潮になっています。
メラトニンの抗酸化力は、(少なく見積もっても)「ビタミンEの2倍」、「グルタチオンの5倍」もあることがわかっています。これだけの威力を発揮する理由に、メラトニンは、水にも油にも溶ける性質があるからです。つまり、水溶性でもあり脂溶性でもあるのです。さらに、血液脳関門でも血液精巣関門でも胎盤でも容易に通り抜けるため、脳の神経細胞をはじめ、多くの抹消細胞をあらゆる障害から守ってくれます。
メラトニンで最近注目されていことのは、抗がん作用です。これについては後日詳しくまとめますが、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、肺がんなどに特に効果的であるという報告があります。
ビタミンCはたいていは重要な抗酸化を発揮しますが、デメリットとして遊離した三価鉄(Fe3+)に遭遇した場合に、二価鉄に還元するため、これが過酸化水素と反応すると、いわゆるフェントン反応を起こしてしまい、最強のフリーラジカルであるヒドロキシラジカルを発生させる最悪の立役者となってしまうことです。(もちろん、ビタミンCに罪はなく、遊離鉄が多いことが問題です)
ビタミンEにしても、その抗酸化力でフリーラジカルを安定させても、自身が酸化型になってしまうため、グルタチオンが周囲に無いと、結果フリーラジカルとして働いてしまいますし、SOD酵素も大量に存在してしまうと、結果大量の過酸化水素を生成してしまう(その後、遊離鉄に出くわし水酸基(OH-)をつくってしまう、水酸基はフリーラジカルの中でも破壊的)という皮肉がおとずれてしまいます。
しかし、メラトニンには、仮に大量摂取(または大量分泌)しても、こうした水酸基や過酸化水素を副産物としてつくりだすことはありません。(とはいえホルモンですので、外からの摂取量や頻度には十分気をつけること)
メラトニンはホルモンの性質もあることから、細胞核の部分で非常に濃度が高いです。DNAを活性酸素の攻撃から防御していると言われています。
メラトニンは他にも免疫系に大きく作用し、脳や心臓に多くの効果をもたらします。性ホルモンの正常なコントロール、不整脈、血圧やコレステロールの正常化にも効果的です。高齢になると、メラトニン分泌はどうしても落ちますので、意識して原料となる栄養を補うか、日本では販売されていませんがメラトニンのサプリメント(輸入品)を摂取するのもいいでしょう。
メラトニンは、生涯をかけて私たちの強い味方となります。ぜひ意識しましょう。
2017年8月28日 ·
夜なかなか寝付けれない人や朝の目覚めが悪い人はメラトニン不足かもしれません。メラトニンは、脳の松果体から分泌され、睡眠の質を高めてくれるホルモンです。
「睡眠ホルモン」とよく呼ばれていますが、正確に言えばそうではありません。深部体温を適正に下げたり、血圧を下げたり、自律神経を副交感神経優位に保ってくれたりするため、夜眠るときに熟睡を促すホルモンではありますが、睡眠を直接誘発するものではありません。
さて、メラトニンの原料はセロトニンです。セロトニンはご存じのとおり精神を安定にするホルモンであり、セロトニンの原料はトリプトファンというアミノ酸(の一種)です。よって、メラトニンはトリプトファンからつくられます。この間の代謝では、ビタミンB6を中心にビタミンB1、ナイアシン、葉酸、ビタミンCが必要になり、ミネラルではマグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄などです。
ところが、こうした栄養面だけでなく、日中に太陽光をどれだけ浴びたかでメラトニンの生成量が影響します。栄養状態が良くても、太陽光を曝露せず、屋内でずっと過ごす人は、概してメラトニン生成量が少ないという結果になったそうです。(ちなみにメラトニンは夜間につくられます)
特に、早朝の日の出から朝8時台の太陽光が望ましいとされています。私がまわった世界各地の伝統社会では、確かに、狩猟採集民も牧畜民も農耕民族も早朝から数時間仕事をして、あとは夕方まで休憩するというパターンが多かったです。
メラトニンは非常に古いホルモンで、30億年以上前に進化した単細胞生物から藻類、そして植物、動物、ほぼすべての生命が保持しています。もともとは活性酸素を消去する抗酸化物質として活躍していました。というよりは、基本的な性質は抗酸化作用であり、進化の過程でホルモンの働きも担うようになったというのが最近の風潮になっています。
メラトニンの抗酸化力は、(少なく見積もっても)「ビタミンEの2倍」、「グルタチオンの5倍」もあることがわかっています。これだけの威力を発揮する理由に、メラトニンは、水にも油にも溶ける性質があるからです。つまり、水溶性でもあり脂溶性でもあるのです。さらに、血液脳関門でも血液精巣関門でも胎盤でも容易に通り抜けるため、脳の神経細胞をはじめ、多くの抹消細胞をあらゆる障害から守ってくれます。
メラトニンで最近注目されていことのは、抗がん作用です。これについては後日詳しくまとめますが、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、肺がんなどに特に効果的であるという報告があります。
ビタミンCはたいていは重要な抗酸化を発揮しますが、デメリットとして遊離した三価鉄(Fe3+)に遭遇した場合に、二価鉄に還元するため、これが過酸化水素と反応すると、いわゆるフェントン反応を起こしてしまい、最強のフリーラジカルであるヒドロキシラジカルを発生させる最悪の立役者となってしまうことです。(もちろん、ビタミンCに罪はなく、遊離鉄が多いことが問題です)
ビタミンEにしても、その抗酸化力でフリーラジカルを安定させても、自身が酸化型になってしまうため、グルタチオンが周囲に無いと、結果フリーラジカルとして働いてしまいますし、SOD酵素も大量に存在してしまうと、結果大量の過酸化水素を生成してしまう(その後、遊離鉄に出くわし水酸基(OH-)をつくってしまう、水酸基はフリーラジカルの中でも破壊的)という皮肉がおとずれてしまいます。
しかし、メラトニンには、仮に大量摂取(または大量分泌)しても、こうした水酸基や過酸化水素を副産物としてつくりだすことはありません。(とはいえホルモンですので、外からの摂取量や頻度には十分気をつけること)
メラトニンはホルモンの性質もあることから、細胞核の部分で非常に濃度が高いです。DNAを活性酸素の攻撃から防御していると言われています。
メラトニンは他にも免疫系に大きく作用し、脳や心臓に多くの効果をもたらします。性ホルモンの正常なコントロール、不整脈、血圧やコレステロールの正常化にも効果的です。高齢になると、メラトニン分泌はどうしても落ちますので、意識して原料となる栄養を補うか、日本では販売されていませんがメラトニンのサプリメント(輸入品)を摂取するのもいいでしょう。
メラトニンは、生涯をかけて私たちの強い味方となります。ぜひ意識しましょう。
脳内ミネラル「リチウム」の重要性
吉冨 信長
8月29日 21:39 ·
誤解をおそれずに言うのなら、脳のミネラルで最も重要なのは実は「リチウム」かもしれません。リチウムはその必要量が超微量であることから、また過剰症ばかりが挙げられてしまうことから、もっとも誤解されている微量ミネラルの一つです。
リチウムは脳神経の遺伝子と栄養素を結びつける、非常に重要なミネラルです。しかし、からだ全体から見ると必要量が微量なため、つい軽視されてしまい、そのためか世界的にも欠乏しやすいミネラルでもあります。
さらに、栄養学の教科書や医療現場においてもリチウムの栄養指導をほとんど見ることはありません(リーマス処方は別として)。必要量が少ないだけに油断してしまい、結果欠乏してしまうことがあるのです。
脳におけるリチウムの役割として、不安、気分、怒りなどホルモンによって動かされる感情のコントロールに働いています。
実際に、アメリカ、ドイツ、オーストリアの成人の中には、毛髪のリチウム濃度が低い人が少なからずいることがわかっており、特に学習障害のある人や犯罪者では異常に低かったことが報告されています(Biol Trace Elem Res. 1992 Aug;34(2):161-76)。
アメリカのある研究では、テキサス州27郡のそれぞれの水道水に含まれるリチウム濃度と、犯罪率や自殺率などの関係を調査したところ、リチウム濃度の高い郡では強盗発生率や暴力による犯罪率そして自殺率が有意に低かったことがわかっています(Biol Trace Elem Res. 1990 May;25(2):105-13)。また、リチウム濃度が高いと、アヘンやコカインなど麻薬による逮捕の発生率も低下していたのです。
ギリシャにおいても、34の各県から149サンプルの水道水を検査したところ、リチウム濃度が高いところほど自殺率が低下する傾向があることが発表されています(Biol Trace Elem Res. 2013 Dec;156(1-3):376-9)。同研究チームは、水道水のリチウム濃度が高い県は殺人事件率が減少する傾向にあることも報告しています(Biol Trace Elem Res. 2015 Apr;164(2):165-8)。
リチウムによる脳への改善効果は今にはじまったことではありません。実は1800年代後半から、うつ病または躁うつ病を治療するためにリチウムが使われていました。しかし、当時の安易な投薬や投薬量の知識不足などによって、その実績は不安定だったようです。また、7Up(セブンアップ)というレモン風味の炭酸飲料をご存じでしょうか。実は販売が開始された1920年代から1950年代までは、気分昂揚作用のためにリチウムが含まれていました。
リチウムはこうした感情のコントロール、気分、怒りや攻撃の抑制などの作用だけでなく、ビタミンB12や葉酸を脳の細胞に輸送するのに必須である(Biol Trace Elem Res. 1992 Aug;34(2):161-76)ことがわかってから、最近では遺伝栄養療法や精神栄養学においてその重要性と摂取の推奨が少しずつリバイバルし始めています。
実際に、B12や葉酸の輸送は、リチウム欠乏によって阻害され、リチウム補給によって回復することがわかっています。ビタミンB12は葉酸とともにセロトニン、メラトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンの合成に関与しているBH4(テトラヒドロビオプテリン)に必要なビタミンです。
自閉症回復のプロトコールを確立しているアメリカのDr.Amy Yaskoは、すべての自閉症児にリチウム濃度を確認することを、提案しています。リチウムは毛髪メタル検査(HMT)によって確認できます。
リチウムは神経保護作用があり、報告では脳虚血状態において神経保護効果があったことや、過剰となったグルタミン酸による興奮毒性からの保護も示されています。また、最近では水銀に曝露した患者にもリチウム補給が大きなメリットをもたらすことがわかっています。
そもそも、水銀毒の症状には、興奮性、イライラ、うつ、不安、ストレスに対する感受性、感情の不安定などがありますが、興味深いことに、これらはリチウム欠乏の症状に似ています。
これはおそらく、水銀が興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸のレベルを脳内で上昇させるというところにあり、リチウムはグルタミン酸受容体に対する調節や抑制作用があるからです。
リチウムの安全かつ有益となる摂取量は1~5mgと言われています(最大でも10mg)。副作用が問題となっている炭酸リチウムであるリーマスなどは1錠100~200mg、最大例1200mg/日の大量処方であり、これとは区別する必要があります。
以上のように、リチウムは脳において非常に重要なミネラルです。実際に、あらゆる精神障害において、このリチウム欠乏との相関も指摘されています。栄養療法の第一歩としてリチウム補給を掲げる医療関係者も増えています。つまり、リチウムを知らずして栄養学を語れないのです。リチウムはそういう意味でも、脳における最も重要なミネラルです。
リチウムの働きは多岐にわたるため、ここでは書ききれませんが、今後も少しずつアップしていく予定です。
ちなみに、リチウムを多く含む食材は、マメ類、海藻類、小魚や煮干し、キノコ類、トマト、キュウリ、キャベツなどの野菜です。リチウムの重要性を見直しましょう。
※リチウムを勉強したい方は、リチウム栄養研究の第一人者であるDr. G.N. Schrauzerの論文を拾ってみてください。また、リチウムを重視した栄養療法を実践しているDr.Amy Yasko関連の著書もおすすめです。
ヒトがビタミンC合成能を失ったわけ
吉冨 信長
2017年8月31日 ·
ビタミンCを体内で合成できない代表的な動物は、ヒト、サル、モルモットです。ただし、本当に合成能が0(ゼロ)なのかは、まだわかっていません。もしかすると、微量で合成されているかもしれません。ここではビタミンC合成能を失ったことを前提に、話をすすめていきます。
さて、ヒトがビタミンC合成能を失った理由として、定説(仮説)では、「果実などをはじめビタミンC食品が簡単に得られるようになったから」、「脳の拡大とエネルギー消費にともない、ビタミンCの原料であるブドウ糖を優先したため」などさまざまです。
ある調査では、ゴリラは1日に4~5グラムのビタミンCを生息する森から摂取しているそうです。初期のヒトも1日に2グラム以上は摂取できていたという推計もあります。
ビタミンCは言わずもがな植物性食品に多く含まれるビタミンです。厚労省によるビタミンCの一日の推奨摂取量は成人で約100mgです。たとえば、ピーマンなら約1袋(150g)食べれば厚労省の推奨摂取量100mgが摂れます。これらをきちんと食べるには意外と結構な量ですし、加熱する場合はもっと食べる必要があります。しかも、毎日食べるのって結構大変ですし、 野菜をはじめとした植物性には「旬」というものがあり、食用できる植物には必ず端境期(はざかいき)が訪れ、季節の変わり目をはじめとした時期によっては、全く摂取できないことも自然界ではありえるのです(生息地にもよりますが)。現代は、農作物がたくさんあり、南から北までの産地リレーやハウス栽培、輸入食品などを通して年中食べることができますが、自然を相手にした本来の生態系ではビタミンC不足に陥ることが少なくないはずです。
分子栄養学や栄養療法的には1グラム以上の摂取を目標とすることが多いですね。レモン50個以上です。これは実に不自然だと思いませんか。(自然界の中では不自然だけど、生化学的には、というよりは現実的には、私も1日1グラム以上の摂取をすすめています)
また、脳の拡大による説ですが、これは矛盾が多いです。サルはヒトと同じくビタミンC合成能を失っていますが、脳化指数はヒトのように高くはありませんし、イルカは脳化指数がヒトに近いぐらい高いですがビタミンC合成をしています。
で、これは私の仮説ですが(今のところの)、ヒトはビタミンCを生理的にはさほど必要としなくなったからではないかと思います。ただし、ビタミンは多くとると生理作用以上の働きをし、つまり薬効的に働きますので、あくまで生理作用の範囲内の話です。
たとえば、亜鉛にはビタミンCの節約効果があります。これは日本人の研究者が発表しています。亜鉛が生体内に充足していると、ビタミンCの必要量が減ることをいっています。ビタミンCを自然界で必要量摂取するのは困難ですが、亜鉛はさほど難しくはありません。また、別の研究で、風邪ひきさんに対する亜鉛とビタミンCのそれぞれの効果の比較研究があります。結果、亜鉛はビタミンCとは比べ物にならないほど風邪に効くことがわかっています。亜鉛はビタミンCとは異なり、ウイルスを直接殺す効果があります。さらに、亜鉛は免疫応答も刺激し、感染の早期終結をもたらします。つまり、感染に関しては、ビタミンC量が少なくとも、亜鉛の充足によって、解決できることを示唆しています。
体内にはビタミンCよりも抗酸化力の強いものが多く存在ます。SOD酵素はビタミンCの約3,500倍あります。ヒトはSOD酵素の活性が極めて高い動物ですね。他、アスタキサンチンはビタミンCの約65~1,000倍、ビタミンEはビタミンCの約5倍、メラトニンはビタミンCの約10倍です。脂質過酸化の連鎖反応をストップするには、まずビタミンEが働きますね。そしてラジカルとなったビタミンEを還元するのはビタミンCだと教科書では教わります。しかし、実際には、ビタミンCがなくとも、ユビキノン、グルタチオン、NADPHがそこにあれば、それぞれが直接、ラジカル型となったビタミンEを還元することができるのです。
アフリカのマサイ族遊牧民や伝統的なイヌイットは植物性食品を摂取する機会がほとんどありませんので、血中のビタミンC濃度はかなり低いですが、壊血病を患うこともなければ、いたって健康体です。なぜなら、ビタミンCはブドウ糖と代謝経路において競合するため、ブドウ糖摂取が少ない彼らはビタミンCを細胞内に効率的よく取り込むからです。
ビタミンC摂取機会が少ないと、尿細管でビタミンCは再吸収されるため、全ては排泄されない仕組みになっています。
ビタミンCは遊離鉄と反応すると、フェントン反応をおこし、猛毒のヒドロキシラジカルを生成してしまいます。がん細胞を倒すのにこのヒドロキシラジカルを武器として戦えますが、昔の人はほとんどガンがなかったといえますので、正常細胞には猛毒となってしまうヒドロキシラジカルをつくるビタミンCを、生体は進化的に避けていたのかもしれません。実際に、抗酸化サプリを長期で服用している人ほど寿命が短いという統計も、私はあながち間違っていないと思っています(ただし、安いサプリメントは栄養素以外の添加物などが問題で、これが悪さをしている可能性もある)。
以上はビタミンCの抗酸化作用の面だけで判断したもので、では、コラーゲン生成はどうなるのか?他の代謝で使われる分はどうなるのか?という疑問についてはまだ答えができていません。
しかし、わたしは伝統社会(狩猟採集民、遊牧民、農耕民)を見てきた中で、ミネラルを充足している感じはありましたが、やはりビタミンCを必要用量摂取している民族はほぼないと感じました。
ヒトがビタミンC合成能を失った理由は、外部から簡単に獲得できるようになったから、ではなく、もしかすると、足りなくても他の酵素やミネラルで解決できたから、というのが答えかもしれません。もちろん、これについては、いまだ謎です。
あくまで、これはコラムですので、現代人はやはり現実的に1日1グラム以上を目標に摂取した方がいいと思います。
亜鉛とアトピー
吉冨 信長
2016年8月31日 ·
アトピーの原因の一つに亜鉛不足があります。乳幼児の亜鉛欠乏はお母さんの母乳が低亜鉛状態であることが原因であったり、成人の亜鉛欠乏は食事によるミネラル摂取不足などが原因です。
亜鉛は300種類以上の酵素が働くときに関与している補因子であり、これが欠乏すると酵素の働きがうまくいきません。
例えば、抗炎症作用を発揮するオメガ3系の脂質代謝において、亜鉛が不足しているとアトピーを抑えるプロスタグランジン(3)が産生されません。α-リノレン酸からEPAに代謝されるには、デルタ-6-デサチュラーゼやデルタ-5-デサチュラーゼという酵素が必要ですが、これらは亜鉛がないと活性化しません(Lipids.1982 Mar;17(3):129-35)。ちなみにこのデサチュラーゼの活性には、亜鉛以外にマグネシウム、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンCの補因子が必要です。
また、亜鉛はタンパク質の分解酵素(胃酸やプロテアーゼなど)を生成・分泌するのに不可欠なため、不足してしまうとタンパク質の未消化物が残ってしまい、アレルギー反応を起こしてしまいます。
同時に白血球による活性酸素の大量発生により、炎症が持続してしまうわけですが、これを消去するSOD酵素にも亜鉛は重要な因子として関与しています(細胞質のZn-SOD)。
亜鉛には腸の内壁を正常化にする働きがあります。アトピーの多く人が腸の状態が悪く、ミネラルの吸収が悪いわけですが、亜鉛を多く投与するごとに、それだけ吸収率が上がり、効果が表れます。これは亜鉛の持続的な多量摂取により、腸の粘膜の再生力が向上し、炎症も低下したことで吸収率が上昇したことが考えられます。
他にも亜鉛欠乏はさまざまなところで生体に関与しています(ホルモン代謝など)。亜鉛摂取はアトピーに対する栄養療法の一つとして、非常に重要な因子であると考えられます。
※治癒目的の亜鉛過剰摂取は、必ず銅の摂取も考慮しましょう。
2016年8月31日 ·
アトピーの原因の一つに亜鉛不足があります。乳幼児の亜鉛欠乏はお母さんの母乳が低亜鉛状態であることが原因であったり、成人の亜鉛欠乏は食事によるミネラル摂取不足などが原因です。
亜鉛は300種類以上の酵素が働くときに関与している補因子であり、これが欠乏すると酵素の働きがうまくいきません。
例えば、抗炎症作用を発揮するオメガ3系の脂質代謝において、亜鉛が不足しているとアトピーを抑えるプロスタグランジン(3)が産生されません。α-リノレン酸からEPAに代謝されるには、デルタ-6-デサチュラーゼやデルタ-5-デサチュラーゼという酵素が必要ですが、これらは亜鉛がないと活性化しません(Lipids.1982 Mar;17(3):129-35)。ちなみにこのデサチュラーゼの活性には、亜鉛以外にマグネシウム、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンCの補因子が必要です。
また、亜鉛はタンパク質の分解酵素(胃酸やプロテアーゼなど)を生成・分泌するのに不可欠なため、不足してしまうとタンパク質の未消化物が残ってしまい、アレルギー反応を起こしてしまいます。
同時に白血球による活性酸素の大量発生により、炎症が持続してしまうわけですが、これを消去するSOD酵素にも亜鉛は重要な因子として関与しています(細胞質のZn-SOD)。
亜鉛には腸の内壁を正常化にする働きがあります。アトピーの多く人が腸の状態が悪く、ミネラルの吸収が悪いわけですが、亜鉛を多く投与するごとに、それだけ吸収率が上がり、効果が表れます。これは亜鉛の持続的な多量摂取により、腸の粘膜の再生力が向上し、炎症も低下したことで吸収率が上昇したことが考えられます。
他にも亜鉛欠乏はさまざまなところで生体に関与しています(ホルモン代謝など)。亜鉛摂取はアトピーに対する栄養療法の一つとして、非常に重要な因子であると考えられます。
※治癒目的の亜鉛過剰摂取は、必ず銅の摂取も考慮しましょう。
リノール酸を減らさないとオメガ3の効果は発揮できない
吉冨 信長
2015年8月31日 ·
オメガ3サプリやオメガ3油の効果の是非、本当に効くのかというコメントや記事を最近よく目にします。まず言えることは、リノール酸を減らさなければ、オメガ3の効果は期待できないということです。
リノール酸食を基本としていたラットに、オメガ3食に変えて、その後の行動を考察した実験研究があります(Okaniwa Y,1996)
エサをリノール酸食からえごま油食に変えた群、エサをリノール酸食から20%だけDHA(オメガ3)で置き換えたものに変えた群で実験しました。前者は明度識別学習能は回復しました。ところが、後者は脳のDHAはほぼ回復したものの、オメガ6(ドコサペンタエン酸)の量が十分に減らずに、結局学習能は回復しなかったのです。
後者はその後、エサのリノール酸をさらに減らし、その分DHAを加えることで学習能は回復することができました。
人間は他の動物のように食生活がそう単純ではありません。近代化が進み、食生活や内容に多様性があらわれ、同じ地域に住む人でも個々で異なるために、これらの効果を試しても、結果は人によって異なってしまうことがあります。
やはり、これらの効果を試すには、それなりに根幹から食生活や内容を見直し、シンプルな食事を続けることが大事になってきそうです。
2015年8月31日 ·
オメガ3サプリやオメガ3油の効果の是非、本当に効くのかというコメントや記事を最近よく目にします。まず言えることは、リノール酸を減らさなければ、オメガ3の効果は期待できないということです。
リノール酸食を基本としていたラットに、オメガ3食に変えて、その後の行動を考察した実験研究があります(Okaniwa Y,1996)
エサをリノール酸食からえごま油食に変えた群、エサをリノール酸食から20%だけDHA(オメガ3)で置き換えたものに変えた群で実験しました。前者は明度識別学習能は回復しました。ところが、後者は脳のDHAはほぼ回復したものの、オメガ6(ドコサペンタエン酸)の量が十分に減らずに、結局学習能は回復しなかったのです。
後者はその後、エサのリノール酸をさらに減らし、その分DHAを加えることで学習能は回復することができました。
人間は他の動物のように食生活がそう単純ではありません。近代化が進み、食生活や内容に多様性があらわれ、同じ地域に住む人でも個々で異なるために、これらの効果を試しても、結果は人によって異なってしまうことがあります。
やはり、これらの効果を試すには、それなりに根幹から食生活や内容を見直し、シンプルな食事を続けることが大事になってきそうです。
登録:
投稿 (Atom)
生命がマグネシウムを利用するようになったワケ
吉冨 信長 2017年9月12日 · 生命が活動する上で最も重要なミネラルはマグネシウムであり、そして見方によっては鉄でもあります。原始生命は鉄を利用した代謝がほとんどでしたが、真核生物や多細胞生物が誕生する頃にはマグネシウムをメインの代謝ミネラルに変えていきます。 今日は、な...
-
吉冨 信長 2017年9月12日 · 生命が活動する上で最も重要なミネラルはマグネシウムであり、そして見方によっては鉄でもあります。原始生命は鉄を利用した代謝がほとんどでしたが、真核生物や多細胞生物が誕生する頃にはマグネシウムをメインの代謝ミネラルに変えていきます。 今日は、な...
-
吉冨 信長 8月21日 21:24 · 東京オリンピックの暑さ対策として、委員会がサマータイム制(英語表記: Daylight Saving Time。以下DST)を提言し、政府が検討を指示していますが、実は海外ではさまざまな健康リスクが報告されています。夏季に時計を1時間進め...
-
吉冨 信長 9月1日 22:44 · リチウムの重要性を語ると、おそらく多くの人が否定的な反応をとることでしょう。なぜなら、双極性障害などに用いられる気分安定薬リーマス(炭酸リチウム)の副作用が問題視されているからです。 しかし、重要なことは、ミネラルなどの栄養素には「最適量」...